零の旋律 | ナノ

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「さてと、今度は誰に夢と希望の虚偽を上げようかな」

 銀髪の男性は頬を真っ赤な血で紋様を描きながら艶笑する。
 独り言をする声は酷く美しい
 その美しさは絶望を見た罪人に甘い甘い夢を見せるような声
 誰もが絶望するような最果ての地で
 彼は夢と絶望を彼の者達にあげる

「狂いゆく彼の地よ、願わくば我に愛を、愛しているゆえに苦しいのならば、誰をも愛し、愛しているゆえに悩むのならば、誰をも殺す。私の故よ、私の御霊よ、私の言霊よ、願わくば我に愛を歪めよー」

 血に染まるその手を、鮮血を愛おしそうに彼の者は口へ運ぶ
 ウットリとするその表情は怪しく美しい
 端整な顔立ちがより一層紅く輝いて見える


「さて、次の夢と希望と絶望な何かな? 誰かな、私の愛が切れるのは」

 ――はははは
 哂笑する


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「っ、姉さん」

 朧埼は、唇を噛み締める、そこから血が溢れようとも気にしない
 こんなの姉さんが受けた傷に比べればなんともないかすり傷以下だから

 そう、何かを決めるのが難しくって
 何かを決めてしまえば、後は実行するだけ
 何かを決めるのが難しい
 けれども、最優先事項があるのならば
 決めればいい

「俺の血統、何かを守りたいが故に発動する」

 呟くのは自己暗示

 淡く透明な光が稲妻のように朧埼を包む
 激さなんてない優しい、純粋な輝きが二十歳をいかない少年を包む
 ――奇麗で儚い
 でも、それは仮初、目に見える輝きでしかないもの
 本当は悲しくて恨めしくて嫌い
 でも、姉という存在を失うことに比べたら大好き

 これが唯一姉を助ける術だから、何にも変えられない大好きな姉

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