零の旋律 | ナノ

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「姉さん血……血が!」
「構うなこんなものっ」

 炬奈ことを心配で心配で堪らない。もしも可能ならば、自分がその怪我を分かち合って姉を助けたいと思うそんな表情に、炬奈は身体中を鮮明に走りまわる激痛に耐えながら微笑む。
 微笑んだまま、炬奈は唯乃に拳銃を向ける

「っ、まだ、戦意があったのですね、主とりあえず下がってください。
私が彼女を片付けますので」
「いやいやいや、その前にこいっ……っておおぅ」

 主――遊月ネオの静止もきかず、人形――唯乃沙羅は炬奈の方へと走り出す
 今度は唯乃が先に行動する番
 今までの動きから見て素人じゃないのは十分にわかる
 しかし、所詮それまで
 人形である自分には勝てるはずがない。そもそも重傷を負った身体ではまともに動くことも出来ないはずと。

 しかし、炬奈は微笑んだまま何も動かない
 それが、何を示すのか唯乃にはわからない。

「私の事を何も知らない、私もお前の事を何も知らない。そんな存在どうしで油断は命取りだな、ここは罪人の牢獄全うなんて求めてはいけない、誰かに救いを求めてはいけない闇の世界」
「そんな事承知しております。でも、誰かに救いを求めないと人は生きていけないもの、この世界で自分がただ唯一の存在だと理解していくほどに人は狂っていく」

 ――そう、それが、それが、人形の禁忌の地へと踏み込んだ『人』

「知っている、だからこの土地は一線を踏み越えた土地なんだ何も救いようのないな」

 霞む歪んだ視界の中で、ゆっくりと唯乃へと銃弾を当てようとする
 そう、何も見えない真っ暗な世界で、気配という視界を頼りに炬奈は銃の矛先を唯乃の足へと向ける

 ――そう、視界が歪むなんて事、それは精神の乱れ

 元から何も見えないのならば、気配で読めばいい、そう朧埼の表情を頭の中で描くように



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