零の旋律 | ナノ

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 ――もしも、俺が何もできずに死んでいくくらいなら
 ――俺が願うのはただ一つ
 ――姉が生きること


 朧埼は姉の制止に一旦は足をとめたものの再び走りだす。血が遠慮なく溢れてくる左腕の代わりをするように隣に並ぶ。

「来るなといったはずではないか!?」
「左腕、後で俺が直すからそれで簡便して、俺は姉さんがいない世界なんていらないから」

 それは歪んだ思考

 唯一無二で今まで世間を渡り歩いてきた二人の二人を守る絆
 どちらも相手が一番大切だから
 守りたいと願うから
 だから、自分を犠牲に払って、守りたい対象者の生を望む
 そこに矛盾が生じていようとも

「共同戦ですか? まぁいいですけども、どちらにしろ、私には関係のないことですから」

 唯乃は再び切り込みに行く、そこの女性の弟の戦力が未知数だとしても、最初から多々変わらなかったということは、そこまでの戦力はないことだろうと判断する。
 怪我を負っていて、なお且つ武器である槍は自分の足もとにあるということを認識して、先に片付けられそうな炬奈を狙うことにした。

 炬奈はなおも続く腕の痛みに顔を歪めながら右手で拳銃を構える
 ――氷華の礎が舞う、幻影の花弁
 唄い紡ぐ旋律
 ――凍らせて、一輪の花と化せ

 氷系魔術詠唱。間合いを今までの戦闘経験から詠唱を唱え終わるまでの時間と、それに必要な大胆の距離をとり、臆病ととれるほどの距離をあけて、魔術で銃弾に氷を付加をさせた。


+++


 愛おしいアナタ

 ――私は何を求めていけばいいの?


+++

 放たれた一発の銃弾は、蒼き閃光を帯びて唯乃の腕に当たった。

「このようなもの、私には……!?」

 蒼き銃弾は、唯乃の左腕を凍らせた

「成程、凍傷でも狙おうというのですかね? 確かに高質化している腕に斬撃や銃撃がきかなくとも、魔術で凍らせることができるということですか、生憎様、私は魔術系統譜は詳しくありませんし」

 腕を凍らされてもなおも冷静な唯乃はそのまま使える右腕で攻撃を仕掛けてくる。
 二人は、右腕の攻撃が当たらないように、左右に避けた

「!? これは……」

 攻撃を仕掛けた後、唯乃は何かの違和感に気がついた。
 凍っている左腕が何かに縛りつけられていると、視線を左腕にやってみると、そこには黄土色の三つ網が施された紐と、金色の鈴が3つまかれていた。


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