Y 唯乃が近づいてくると、炬奈は後ろに飛び跳ねて、間あいとる。 一瞬でも動作が遅れれば、唯乃の高質化した腕で真っ二つに切り裂かれていただろう。炬奈が先ほどまでいた場所に唯乃の腕が空を切り裂く。 炬奈はすぐに拳銃では不利になると判断をし、6発残っている拳銃をホルスターにはしまわずに地面に放り投げた。 そして、再び後ろに飛び跳ね、瓦礫に足を掬われないように着地をする。 精神を集中させた すぐに間あいを詰めて、やってくる驚異に慌てることなく意識を“イメージ”を具現させる 右手の周りが翡翠色に淡く発光する。――現れたのは槍 “異時空間”という炬奈の持つ独自の空間から体内の血液に宿る魔力の源を具現して使用することによって武器を空間から取り出すという高位魔術―空間召喚 炬奈は空間召喚で出した槍を即座に構えて、女性と接近戦で戦うという戦法に変更した。 唯乃はそのまま、二本の凶器と化した腕で炬奈に切り込みに向う。 どちらも己の目的を果たす為に激突する。 刃と刃が激しくぶつかり合う金属音があたりに響く 特殊加工のされている唯乃の腕はもはやそれは腕ではなく武器――刃と化している。 例え槍の刃とぶつかり合っても、痛みは感じない。切られているわけではないから、 ぶつかり合っているだけだから、金属同士がぶつかり合う。 唯乃は力技で炬奈の槍を押しのけた。力技で行くなら、女性である炬奈の力では自分との力勝負では勝てない。そう唯乃は判断する。 そのまま、唯乃は炬奈の心臓部をめがけて腕を斜めに振りかざした ――!! ぶつかり合った時炬奈は侮っていた。 例え力技になったとしても、互角で、押し負けることはないだろうと、唯乃の外見を見て判断した。 例え腕をいきなり武器に変化させ、硬質的な翼をもって現れても、“人形”だとしても負けないだろうと鷹をくくっていた炬奈は驚愕した。 同時に理解した、このままいけば自分は確実に死んでしまうだろうと。 それだけは避けたかった、今。目の前で朧埼を残して死にたくはなかった。朧埼が悲しむ顔を見たくはない。 ――もしも、私を置いて先に朧埼が逝ってしまうなら、私は朧埼の後を追う。でも、朧埼には生きていてほしいから ――あぁ、この世界で一番大切な弟よ、唯一の肉親よ [*前] | [次#] TOP |