U そして、これから自分たちが進むべき方角である北には、此処が砂漠ではないかと錯覚させる砂が広がっているだけ。 「私は人形ですから、人より五感、中でも聴覚・視覚・嗅覚は優れています。この先に何か、誰か生きている者がいるかもしれません」 「かも? 不確定だな?」 「多分、気配を消しているのかもしれません。僅かに感じる違和感は……ここから少し先です。確かめますか? 主」 唯乃の言葉に遊月は首を縦に振って頷いた。 そもそも、確かめるにしても確かめないにしても、自分の目的は北の方角にある最深部の近くにあるのだから、誰がいたとしても先には進む必要があった。 失ったものを取り戻しに再びこの地に足を運んだ―― 「わかりました。では、私が先に行ってみてきます。もしかしたら、あの罪人を殺した犯人かもしれませんから……主に余計な傷を負わせるつもりはありませんので、私が先に行って始末してきます」 唯乃は硬質で機械的な紋様のある深紅の翼を広げてそのまま、北の方向に飛び立った。 勿論、主と自分以外の生きている者の生命体がこの周辺に存在しないのを視覚と聴覚で感じ取った後に 「早っ。ってか置いていかれてんじゃんよ! 唯乃、別に俺はそこまで過保護にしてもらうつもりはないぞ! つか唯乃は俺の母親でもねぇっての!!」 遊月も走り出した。 遊月には唯乃のように自在に天空を翔ことのできる翼なんてないから地面を走る自身の足で瓦礫を蹴った。 +++ 幾百の命を奪えば、私は救われるの? ――そうだね、それは君が奪われればいいんだよ。私のために一生を捧げて だから、君は一生その御霊尽き果てるまで繋がれた楔の中でもがき 朽ち果てればいいんだよ 可愛い可愛い壊したいほどに愛おしい私の人形よ [*前] | [次#] TOP |