零の旋律 | ナノ

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「そうか。……一つ無礼を承知で聞いてよいか?」
「ん、いいよ。多分僕の答えと一緒だとは思うけれど」
「蘭凛が復讐したいと思っている相手はお主か?」
「うん。僕だね、僕は直接的に関わっていないから、無実だーとか叫べば叫べるけれどだからといって、その者全てに関与していないわけじゃない。恨まれるのも当然の原理だ。けど、蘭凛のことを気に入っているのなら僕が此処に来たことを言わない方がいいよ」
「わかっておる」

 復讐が生きる理由なら、復讐のために生きているのなら、雛罌粟は彼らに復讐相手がきたことを告げない。
 隔てている壁を越えてやってきた彼のことを知らせない。
 それが是かも蘭凛が生きていくためと信じて。
 知ってしまえば復讐の炎は一層と燃え盛り、己の身をも焼き尽くしてしまう。
 そして――自分の術を一目で見抜いたカイヤがただ者ではないと理解したから、蘭凛が挑んだところでよくて相打ちがいいところ。むざむざ死なせに行かせることを雛罌粟はよしとしない。
 雛罌粟の心の中にしまい、蘭凛と是からも行動を共にする。

「じゃあ僕は万が一二人に会わないために怱々に移動したほうがよさそうだね。屋根の上にでもいるから終わってから合流しようよ」
「……いや、移動しよう」

 元々雛罌粟にはあいさつ程度の予定だった。予想外のことが起きた物の目的は達成出来た。
 長居してひと騒動起き、巻き込まれるよりは、この場所を後にした方が効率がいい。

「お主。我に用があったのではないのか?」
「いや、久々に第二の街に来たから雛罌粟に挨拶しようかと思って」
「そうか、なら気をつけるのだな」
「わかった」

 簡単に挨拶を交わし雛罌粟の自宅を後にした。道中蘭舞、凛舞の双子に出会うことなく無事第一の街に到着する。
 真っ直ぐに朔夜の自宅に向かう。カイヤの目的を果たす為の他に、篝火に会う理由があった。
 罪人の牢獄に滞在している間、拠点として朔夜の自宅か、もしくは榴華の自宅に遊月は滞在したかった。
 見知らぬ相手より、見知った相手の方が安心だ――何より朔夜のことを遊月は信頼している。
 呼び鈴を鳴らすと篝火が出てきた。

「よお、久しぶり」
「あぁ、久しぶり。なんだか見ない顔が二人いるが、どちらかが炬奈のいっていた雅契家の?」
「あぁ、そっちの白髪頭」
「白髪頭っていわないでよ!!」

 カイヤが抗議をするが、朔夜の自宅は二階にある一軒家だ。一階に何があるのか遊月は知らない。
 階段前で止まっているため、下の方にいるカイヤの姿は頭部以外他の面々に隠れて見えない。

「まぁ此処じゃなんだから中に入れ」

 ぞろぞろと人が入って来る音に室内にいた朔夜から怒鳴り声が響く。

「何人いんだよ!!」

 相変わらず短気で口が悪いなと炬奈は苦笑する。

「六人」

 朧埼が返答すると

「はぁ? なんでそんなに大所帯なんだ……って朧埼たちか久しぶり。何だか見ないのが二人もいるけれど」

 朔夜は部屋から出てきた。視線は自然と汐とカイヤにいく。


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