零の旋律 | ナノ

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「そうですね。人など、どうでもいい。そういう風に感じました」
「あれは、律とカイヤは同種の人間だ」

 だからこそ実力は申し分ないのだろうな、そう最後に付け足す。
 そして、炬奈のような人間が彼らと対等に会話出来ることに一種の感心を覚える。

「よくわかったな、あいつらは同種だ」
「……貴族がとんでもない輩の集団だということはよくわかった」

 律も貴族側の人間だろう、遊月はそう感じていた。こうなると何れ情報を貰いに行く玖城家も一体どんな性格なのか、話しに聞く限りは律よりはまし程度の人物――会いたくなくなってくると遊月は人知れずため息をつく。
 彼らを相手にするくらいなら罪人を相手にしていた方がずっとましだと、改めて実感する。

「私らはその枠に入れるなよ」

 苦笑いをしながら遊月は頷く。全ての貴族がそうではないと知りつつも、カイヤや律といった面々が飛びぬけていて、他の面々の印象を塗り替えてしまう。
 普段遊月と唯乃は宿をとって休んでいたが、今夜はそのまま日鵺家に泊ることにした。

「それではおやすみなさい」
「おやす」

 遊月と唯乃は客室にそれぞれ移動する。部屋は別々だ。
 朧埼も欠伸をしながら現在時刻を確認する。深夜の二時を回っている。通りで眠たいはずだ、そう思いながら自室の布団にくるまった。一分もしないうちにすやすやと寝息を立てる。
 炬奈は自室の椅子に座りながら考え事をしていた。
 後期限は六日。その間にある組織を壊滅状態にすること、それを対価に泉から情報を貰うこと、そして罪人の牢獄に行くこと。一か月と一週間は長いようで短かった。日々の対応に追われるうちに、あっという間に時間は過ぎ去っていった。
 罪人の牢獄に再び訪れることに恐怖はない。復讐を達成するために、日鵺家を壊滅状態に追い込んだ輩を炬奈は絶対に許せなかった。日鵺を失ったこと――何より朧埼を傷つけたことが許せない。

「これ以上悩んでいたところで仕方ないか」

 炬奈は思案をやめ、横になる。


 翌朝、炬奈がリビングに行くと台所ですでに朧埼が料理を作っている。遊月は眠たそうに瞼をこすりながら、唯乃はその隣を歩き、食卓に座る。
 就寝時間が遅いのにも関わらず早起きして料理を作っている朧埼に遊月は、罪人の牢獄で行動を共にした篝火の姿を重ねる。もっとも料理の腕前だけで判断するなら朧埼の方が格段に上なのだが、それこそ料亭を開けるのではと思ってしまうほどの味。遊月にも唯乃にもこれほどの料理は作れない。それもバリエーション豊富と来たものだから、ただただ感心するだけ。


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