零の旋律 | ナノ

U


 舞い降りるこの地に再度を
 儚き散りゆき生命に灯火を廻り


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「主(マスター)、この地は一体なんなのでしょうか? あまり、宜しい場所とは到底思えないのですけど」

 
 罪人の牢獄入口


「ん? ああ、ここは罪人の牢獄の入口だ。罪を犯した人間が有無を言わさず放り込まれる無法地帯。中には冤罪の罪でも投獄された奴らとかも沢山いる。政府のごみ捨て場とも言われるな」
「あまり、いい表現ではありませんね。主」
「まぁな」
「その地に進んで足を踏み入れることもいいとは思えませんけども」

 暗く暗い建物が立ち並ぶその場所に外套を手に取り進んでいく女性は主を見る。
 外套に照らされてほんのりと橙に映る漆黒の長い髪を後ろに一つに纏めている歩く度に揺ら揺らと上下左右に移動をする。
 服装も黒を中心とした服装で、暗い中で活動するのには向いている格好であった。
 そんな主とは違い落ち着いた赤い服に身を包む。優美な、しかし着飾ってはいない衣装を身に纏う。深紅の長い髪が左右に揺れた。そして髪と同じ深紅の瞳が前方を見据える。

「主、ここからは私が先に見に行きますから、安全な場所で待機していてください」

 暗い場所を外套を頼りにして進んでいくと、途中で、崖に出会ってしまうという奇妙な造りに女性は驚きながらも、ここまでやってくるまでの間の道のりは一本道であり、この場所が行き止まりで道を間違えたということはないだろう。そう結論を出した女性は、下に進めば、主の目指す目的地に辿り着く、そう思って自ら先導して下に降りると口にする。
 主に危険が及ぶことがないようにと。
 しかし、当人の主は申し出を断る。

「その必要はないよ、この下に堕ちてもいるのは罪人だけ、深層部ではない罪人は大して害にはならないよ。むしろ脅えるだけ、来ない助けを願っているだけ」

 主は自虐的に微笑んだ微笑を女性に見せながらそう言った。


「わかりました。では主、一緒に降りましょう。私が下まで主を運びます」

 風がなく無風空間にもかかわらず女性の真紅の髪は揺れ動き、高く髪が舞い、降りた時、女性の背中には機械的紋様は翼が生えていた。
 機械的な翼は女性の髪を同系の真紅の翼を硬質的
 しかし女性の優美さをよりいっそう際立たせるようなものだった。
 そのまま、女性は主の身体をお姫様抱っこの形に抱き、崖に向って何の躊躇もなく飛び降りていった。どこにそんな力があるのか顔色一つ変えずに主をお姫様抱っこしたまま

 暗い闇だったため、崖から地面までの距離が見にくく、深い深い奈落を女性にイメージさせたが、実際に飛び降りてみると、そこまでの距離はなく、あっさりと地面に着地することが出来た。
 翼がなくとも、飛べなくとも問題ないような距離であった。
 しかし、降りることは出来ても戻ることは出来ない高さはある。
 目指す場所は罪人の牢獄、罪を犯した人が送られる大地――


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