零の旋律 | ナノ

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 それは何処か暇つぶしに、面白いものを探し求めているように遊月には思えた。本心を他人に悟らせないかのような表情。

「変わり種……」

 虚の言動を遊月はそう評した。そんな独り言が聞こえたのか聞こえてないのか笑みを浮かべながら虚は遊月に話しかける。

「君も人形が欲しいかい?」
「いや、俺は人形には興味がない。唯乃を連れてくれば良かったかな」

 遊月は炬奈の方を向いて唯乃の名前を出す。人形が好きかどうか遊月は知らないが、少なくとも自分が人形を持つよりかはずっと似合う。

「唯乃?」

 炬奈は無言だったが、代わりに虚が反応を示した。

「ん、あぁ。唯乃沙羅。こいつと一緒に旅をしている女性だ」

 虚の反応に遊月ではなく炬奈が答える。

「唯乃沙羅か、なんだか会ってみたいねぇ」

 名前を聞いただけの唯乃に興味が沸いたのか、虚はそう呟いた。何処か滑稽そうに。

「珍しいな、お前が他人に興味を示すなんて」
「失礼だねぇ。私を何だと思っているのか、まぁ基本的に人間は興味の対象外だからそう思われるのも無理ないかもだがねぇ」
「……虚、それよりさっさと人形を作れ」

 会話を楽しんでいる虚に、炬奈は本題に戻す。

「わかったよ。日鵺の御用とあれば誠心誠意込めて作らせて頂くさ。ところで日鵺、君は一体私に何回命令すれば気が済むのかね」

 虚は椅子から立ち上がって、軽やかではない足取りで虚ろ以外立ち入り禁止の場所へ入って行く。
 炬奈と遊月は虚が戻ってくるまで手持無沙汰だった。

「なぁあいつは室内でも帽子を被っているのか?」
「あぁ。というか私は帽子を脱いだ姿を見た事がない」

 暇つぶしに虚について会話を始める。


+++
「ねぇねぇ、君はどう思う? この物語の結末をさ」

 誰に語りかけるわけでもなく、誰かに聞かれるわけでもないのに人形師は彼の者へと語りかける。
 それはただの物語、それはただの語りごと。人形師は彼の者達の未来を見透かそうとする


 手を伸ばせば届きそうなのに、ふと上空を見上げればぶつかりそうなのに、どんなに背伸びしてもどんなに上へ上がろうとしても、どんなに両手を高く上げても、どんなに上を見上げても、ぶつかりもしなければ届きもしない。
 近くて遠いい誰も何も届かない虚構の城を追い求める


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