零の旋律 | ナノ

T


 足を踏み入れれば二度と戻れないと知りながらも
 それでも許せない“モノ”へ復讐を望み
 足を踏み入れる
 そこが死の大地だとしても、奈落の底だとしても、絶望の崖だとしても
 願うは復讐を望むは復讐を叶えるは復讐を――


「聞くまでもなさそうだが、一応聞いておく。お前等は私等に一体何用だ?」

 女性は距離がある程度離れている6人の『罪人』に聞こえるように、声をある程度出して聞く。
 その凛とした声は廃墟の地に響く。
 その声に

「声も売れるのか?」
「そんな物知らん。とりあえず、持っていけばいいんじゃね?」

 6人の罪人は女性の質問を無視して会話を始めた。
 しかし、その会話が女性のした質問の回答でもあった。女性はその場から足を動かすことなく、静かに余裕ぶっている『罪人』に気づかれないようにコートの中に手を入れ、腰の部分のベルトに付いているホルスターに入っている“モノ”を掴んだ。
 そして、そのまま、それを抜く――無言のまま

「ひゃははは、とりあえずさぁどうする?」
「やっぱ売りサバがぁ」
「!? 血? だぁは」

 6人の罪人に焦点を当てて、“それ”を撃った。
 女性の地面には、空薬莢が6発、カラン、コロンと音を立てて落ちる。
 6人の罪人は大して悲鳴を上げる間もなく、それ以前に反撃をする暇さえなく、真っ赤な血しぶきをあげて地面に倒れ伏せていった。
 消炎の白く濁った煙が女性の周りに少しの間纏わりついたが、直ぐに風の流れによってそれも消えていった。


 本来この大地は風を帯びないことには気がつかない


 一気に閑散としたところで少年は口を開いた

「姉さん、こいつらは、運び屋の類か?」
「まぁその下っ端とかその辺だろうな。最近は昔とは違い、罪人の牢獄(ここ)は罪人が上と取引をしたりしているらしいからな」
「……姉さん!? こいつら……」
「ああ、多分獲られたか、自らの意思か」

 二人は瓦礫に足元を掬われないように注意を払いながら、
 6人の罪人の元までやってきた。
 朧埼は驚いた表情で、女性は無表情で6人の罪人だった彼らを眺めた。
 彼らの身体にあるそれは――


「生きるためか、それとも……」

 6人の罪人だった彼らを見ながら静かに呟いた。朧埼には聞こえないように。
 そして最後に罪人だった彼らから目線をそらして、付け足した

「だが、私たちも生きるためだ。さようなら、6人の罪人よ」



- 10 -


[*前] | [次#]

TOP


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -