第六話:術 外に出た時、水渚はまだ座っていた。 「やぁ、生きていたんだね」 特に興味なさそうにいう。水渚の元に寄って行き座る。別に水渚から離れた場所に座っても問題はなかったが。 「一応。ってか栞に全部もっていかれた感じ」 少ししても誰も返事しなかったため篝火が返事をする。 「へぇ、栞ちゃんが。よかったね。場合によっては栞ちゃん敵になっていたわけだから」 淡々と答えるそれは、良かったと感じさせるものではなかった。だが、篝火は安心する。もしも栞が敵だったとしたら――そう考えると恐ろしかった。あの時あっさりと殺したあの能力の高さを間近でみたからか。一体どんな力か見当もつかなかった。 そうして各自一時間の休憩を取ることにした。榴華が水渚に近づく。 遊月も視線を水渚のほうに向けた。一体榴華が水渚に何の用があるのかと好奇心と疑問。 「なぁ水渚っち」 「なんだい?」 「シオリンが第三の街でやらかしたことってなに?」 それは篝火も疑問で、水渚の隣に座っていた篝火も水渚に視線を向ける。話を聞こうとしているのは篝火と榴華、遊月の三人だ。篝火は栞が元第三の街支配者だと最果ての街に言った時、初めて知った。篝火が罪人の牢獄にやってきた時の支配者は既に水波だった。だからどういった経緯で支配者になったのか、何をやらかしたのかまでは知らない。 最初は何を言っているのだろうと水渚は思考したがすぐに合点がいく。 「あぁ、それ。昔々さ、罪人の牢獄支配者に取って代わろうと考えた馬鹿な第三の街の支配者とその取り巻きがいたんだ」 「へぇ、愚かやな」 「あぁ愚かさ。でも少しは賢かったみたいで、罪人の牢獄支配者が面倒を見ている少年まぁつまり朔夜だね。朔を誘拐して人質にとったんだ。でその時第三の街支配者の元に乗り込んだのが栞ちゃんと罪人の牢獄支配者でね」 何故、態々銀髪のことを罪人の牢獄支配者と呼ぶのだろうか、そんな疑問が篝火に過るが、呼び名など其々かと勝手に納得をする。 「まぁ、誘拐するさいに手荒に扱ったんだが、それとも罪人の牢獄支配者への恨みでもあったのか、朔がねぇ痛めつけられていてね。その現状を知った栞ちゃんマジギレしちゃってさ。第三の街支配者は――罪人の牢獄支配者が抑えていたんだけど。取り巻きたちを栞ちゃんが虐殺して。もっとも簡単にしなないように苦しめて殺したらしいよ」 「らしいってのは」 「私は実際にその時はその場にいなかったからね。で、まぁそのまま栞ちゃんは朔に被害を加えるかもしれない罪人。まぁ罪を犯しているわけだからね。周辺にいた今回の事件に関係ない罪人達まで虐殺しはじめたんだよ。まぁこっちの罪人の方は一撃で殺していたみたいだけど」 あの普段へらへらとし飄々としている青年からはあまり想像出来ないような光景だったが、先ほど彼の簡単に殺した姿を見た後では想像することも難しくなかった。 「大半の第三の街罪人が殺されちゃってねー。あれ以上殺戮が続いていたら街は滅んでいたね」 「じゃあ、何故滅びなかったんだ」 「あぁ、偶々“僕”がその時通りかかって罪人の牢獄支配者と共同戦線貼って栞ちゃんを止めたから」 偶々で街が助かったのだろうかとは思わずにはいられない。 「なら、栞よりお前の方が強いってことか?」 遊月の疑問。確かに水渚の力は強い。けれど栞の力は水渚の沫等最初から関係ない。 「んー普段の栞ちゃんなら、私を殺したくない状態の栞ちゃんには勝てるだろうけれど、本気出されたら私では無理だろうね。何せ栞ちゃんに私の沫は意味等ないだろうし。まぁその時勝てたのは簡単さ。罪人の牢獄支配者が私への攻撃を全て身代わりしてくれたから、つまり私の盾になってくれたんだ」 罪人の牢獄支配者――銀髪。いくら傷つけようとも即座に回復するだけではなく、彼らが罪人の牢獄に来てから知る限り容姿に変化がない。老けない人物。何時から罪人の牢獄の支配者として君臨しているのか、誰も知らない。 [*前] | [次#] TOP |