零の旋律 | ナノ

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「とりゃ」

 篝火は勢いよく蹴り飛ばす。彼は壁に激突する。けれどすぐに起き上がってきて飛びついてくる。足の位置をずらして攻撃を交わす。

「なんだよ」

 余所見をする余裕はない。強敵。
 いくらダメージを与えようと蓄積しようと彼らは一向に疲れを見せない。

「お前ら、一体っ……はぁ」

 右足首に痛みを感じる。鈍い痛みは断続的に続く。


「あははははは、さぁこのまま死に行くといい」

 研究者が高らかに笑う。笑う。笑う。

「君らはそのまま喰い果てるのだ」
「ふざけるな!!」

 朧埼が怒鳴った。姉の怪我も増えている。他の面々だって無傷じゃない。このまま血が流れ続けたらどうなるかわからない。
 それなのに、それなのにこの研究者は――怒りがこみ上げてくる。

「何をふざけるななんだ。俺たちは罪人でしかない」
「君たちと同じ罪人だ」
「そうそう、罪人に今さら善悪観念でもとくつもりか?」

 研究者たち全員が答える。
 朧埼は拳を強く握り締め――。

 ――答えはまだ見つけられない。

 突如として閃光が視界に広がる。辺り一面を白で覆い尽くす程のまばゆい光を。
 彼らに苦戦していたため気がつくことが出来なかった。
 研究者たちが笑っているのに――それが今までと同じだと判断して。
 まばゆい光から目を守るため自然と瞼は閉じる。
 開こうにも眩しすぎる光で人物を判断出来ない。明るすぎる。

 遊月の前には彼らがいる。――殺そうと歪な声をあげてやってきた。
 遊月は反応しようとするがその明りに反応が鈍る。何も見えない。脳内に残る白の印象に反応が遅れる。
 しかし遊月は彼らから攻撃を受けることはなかった。
 遊月の右側に立ち、遊月を守ったのは槍を拾って急いで遊月の元へ駆け寄った炬奈だった。

「遊月! 大丈夫か」

 炬奈が守ったことが予想外なのか。それとも誰も動けなかった中で唯一炬奈が動けたのが予想外だったのか。遊月は何も言わない。
 徐々に光は収まっていき視界を元に戻していく。
 炬奈は槍で薙ぎ払う。彼らはすぐに再び襲ってくる。
 炬奈のわき腹を傷つける――。炬奈は痛みで顔を顰める。
 その時光が収まり再び動けるようになった遊月と目が合う。

「炬奈――もしかしてお前」

 遊月が最後まで言い切る前に、炬奈は地面に向けて身体が傾いていく。遊月は咄嗟に炬奈を支える。
 よく見れば炬奈はわき腹以外にも複数の傷をおったらしくあちらこちらから出血している。

「何だ? 遊月」
「いや、今はいいや」

 遊月は打ちきる。予想外の光で怪我をしたのは炬奈だけではなかった。篝火も榴華も反応が遅れたのだろう、先刻より怪我が増えている。唯乃は平気な顔をしているが、無傷ではないだろう。朧埼だけは守られていたからか、怪我らしい怪我はない。
 遊月を殺そうと彼らが動く。炬奈を支えている状態では交わしようがなかった。
 近すぎた。至近距離――

 その時影が動いた。
 遊月を殺そうと近づいた彼のうち一人は突然腕が切り刻まれる。再生をすぐにしようとするが、再生するまえにまた別の場所が切り刻まれる。

「しお……り」

 この攻撃方法を遊月は見覚えがあった。
 遊月の後に栞が姿を現す


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