T 少年は虚ろな瞳で罪人を見上げる ただ、ただ見上げるだけ 何を言われてもただ見上げるだけ。 棒のように細い手足を地面に張り付けたまま、瞳だけが罪人を見上げる 罪人は続ける 「君はこの地で何を求める? 夢なんていう空想じゃなく、僕は生きることを求める。君は? このふざけた、人の罪の産物の地で」 少年に向けて、優しく微笑み、少年の高さに合わせて前かがみになり手を差し伸べる。 だが、そこには一切の優しさなどは存在しない。 「その手、俺が今とれば、俺は死なずに済む? 俺は、まだ生きたいから。終わりを望みたくないから」 少年は罪人に救いを求めた。 この地で救いなんて言葉、意味のないこと。 優しく慈愛に満ちた『人』などいない。 この地に存在するのは『罪人』だけ 「ふぅん。君は僕に助けを求めるんだ」 罪人は冷笑を浮かべた。 怪しく光るその冷笑は見るものに、不安と恐怖を抱かせるだろう しかし、少年には不安も恐怖も何も感じなかった。 否、感じることが出来なかったのだ。 全てに絶望をした少年は恐怖などなかったのかもしれない。 それとも、恐怖を感じすぎて、恐怖という感覚そのものを忘れてしまっていたのかもしれない。 罪人達の祭りごとは静かに開幕をする。 夢や希望など何もない闇の空間で [*前] | [次#] TOP |