零の旋律 | ナノ

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「……何者だ」
「銀髪はこの罪人の牢獄支配者だよ」
「……罪人の牢獄支配者(そうか、銀色のことか)」
「そう。それに銀髪は作戦を考えたりなんだりする頭脳戦の方が得意なんだ。だからこそ態々生き残りを生かしておく意味が俺には理解できないんだよ」

 もし生かしておこうと思い気に入った相手なら、手元に置いておくはず。復讐新等植えつけないはず。そう考えているからこその発言だった。

「もしお前らに生かしておくだけの理由があったとして、態々復讐新を植えつけるような面倒なことはしないはず。むしろ自分の手駒として動いてもらうために進めると思うね」

 遊月も加わった。それは銀髪を知っているからこその言葉。
 炬奈と朧埼不承不承しながらも、承諾した。

「他にはいないのか?」
「いるにはいるけれど、それは犯人じゃないな」

 遊月が答える。

「誰だ?」
「さぁ」

 遊月は恍けて答えなかった。炬奈としては答えてもらいたいところだったが、それ以上追及はしなかった。遊月の言葉を信用したわけでも、信頼したわけでもなかったが。半信半疑といったところ。

「まぁいいさ。この街にいる可能性が上がっただけでも収穫ものだ」

 時刻は昼を廻っていた。昼時の為、小腹がすいてきたが、この街では昼食はどのようにすればいいのか迷い炬奈は何も言わなかった。そのうち榴華辺りが騒ぐだろうと確信して。
 案の定それは十五分後にやってきた。

「なぁなぁ、そろそろ自分腹減ったわー何か食べん?」

 腹を手で押さえる榴華。

「まぁ確かにそろそろ小腹はすいてきたな」

 密かに同意する炬奈。

「じゃあ、この辺で何かを食べよっか。梓のところ行く?」
「いや、それは遠慮しておきたい」
「んーじゃあ、付いてきて」

 栞が先導する。その後ろについていく。何処に向かっているのかを知らないまま。
暫くするとある一件の家に辿り着いた。最果ての街にある建物にしては、綺麗さが漂っている。けれどその雰囲気もまた、最果ての街に馴染んでいるものだった。決して浮いていない色。
 栞は二度ノックをした。誰かの家なのだろうか。
 しかし反応はなかった。栞はそのままドアノブを回す。鍵はかかっていないのか開いた。そしてそのまま室内に入る。
 朔夜は何処か悲しげな表情を漂わせながら栞の後に続く。他の面々は此処が誰の自宅なのかわからず一瞬躊躇したが、家の前で往生しているわけにはいかないので、続いて室内に入る。
 部屋の中は何もないような空間だった。何処か寂しさを感じさせる。人っこ一人住んでいないかも様な――閑散とした室内。


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