零の旋律 | ナノ

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「さて、じゃあ目的のもん探しましょーか。合流しちゃいましたし、とりあえず一緒に行動しましょうか」

 榴華の言葉に誰も異論はなかった。
 最果ての街のある一角。端に辿り着いた時朧埼は走り出す。

「朧埼!?」

 炬奈は慌てて後を追う。朧埼は炬奈の制止に耳を傾けず一心不乱に走っていた。
 しかし途中で朧埼の足取りは止まる。肩を上下に揺らし、呼吸を整えている。
 一方急いで追いかけてきた他の面々は朔夜を除き、息を乱してない。
 恨めしそうに朔夜が睨む。

「朧埼、一体どうしたんだ」
「今、昔みた姿を見かけた気がしたんだよ。途中でいなくなったのだけど」
「待って。逃げられたじゃなくていなくなった? 言葉の繆かい?」

 栞が割り込む。

「いや、言葉通りの意味だ。姿を見かけたと思って走ったら次の時には姿が見えなかった」
「…………」

 朧埼の言葉に栞は無言になる。

「何か気がついたのか?」
「ううん。何でもない。何か術で移動したのかね」
「さあな」

 朧埼は不機嫌そうに答える。復讐相手かもしれない人物を見かけておいて、取り逃がしてしまったという自責の念が強いのだろう。

「……(もしかして、移動術を使ったのか。だとしたら……)」
「なぁ、栞。一つの可能性だが、この罪人の牢獄で移動術を使える人物はどの程度いる?」

 炬奈が栞に話しかける。
 栞は一瞬間を開けてから、ゆっくりと答えた。

「移動術は難易度が高いから、術に精通していても怱々は使えないしねぇ……特殊な術を使って移動することなら可能な罪人は何人か。移動術が使えるのはそれこそほんの一握りじゃない?」
「なら、そいつらを当たっていけばであるのではないか?」
「……それが正解に辿り着く可能性は逆に低いんじゃねぇか」

 朔夜が割り込む。その可能性を示唆されたくなかったから。

「どうしてだ」
「お前らの目的は復讐なんだろ? 移動術が使えるってことは術に精通している並大抵の相手じゃない。そんな奴が態々復讐する可能性を残している方がおかしいだろう」
「一理ある、とは思うが私たちには手掛かりが少ないのだ。朔夜お前も何か知らないか? 移動術が使える人物を」

 朔夜の中である人物たちが浮かんだ。しかし朔夜はそれを口にすることはしなかった。

「色々今考えているけれどよ、逆に少ないからこそ思いつかねぇんだよ」
「銀髪はどうだ? いやないか」

 篝火が朔夜に助言したところで、すぐさま自分の提案を棄却した。
 無駄だから、無意味だから。

「銀髪? 何故すぐに否定した?」
「銀髪なら態々お前らを生かしておくとは思えないからだよ」
「……理由にはなっていないが」
「俺もそれには同意」

 朔夜も篝火同様、銀髪を外していた。理由は大体篝火と一緒だったから。


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