零の旋律 | ナノ

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 最果ての街を放浪している最中、二回ほど罪人に襲われたが、時間をかけるのを面倒になった榴華が、地道な作業でストレスがたまっていた榴華が、偶には地味な作業じゃなくて派手にやりたい榴華が、圧倒的な力を持って蹴散らした。その為炬奈一行は大した苦労することなく進めた。

「流石戦闘能力に関しては最強って言われるだけのことはあるよな。此処の罪人相手でも全く気にしていないもんなぁ」
「サクリンそれは褒め言葉ん?」
「サクリン呼びを止めたら褒め言葉だ」
「びみょーな心境やんかそれ」

 眠たそうに朔夜は欠伸をする。実際ここ最近は寝不足だった。数日離れてみてわかる篝火の有難さを実感していた。
 それを榴華に口にしていえば、何か違うだろと怒られただろうか、それとも笑われただろうか。
 その性格を治せと言われるだけかもしれないが。
 暫く歩いていると、前方から見覚えのある四人組が歩いてきた。炬奈達が気付いたのとほぼ同時に四人組――篝火たちも気がつく。


「なんや、自分ら最果ての街にいたんかいな」

 榴華が篝火に話しかける。首を縦に振る。

「あぁ。しかし遊月の探し物は未だ見つからずってところだ」
「そうか、こっちも似たようなもんや。なーんにも見つからんと彷徨っているわ、迷子やわ。放浪人やわ……って意外や。未だに篝火はんと、シオリンと一緒にいるってことが」

 何故だ、そう遊月は言葉に出さずに首を傾げて伝える。

「だってちゃうか? 自分らは結構強いし、それにゆうづっきは、この牢獄にいたことあるんやろ? なら地の利はあるんやから、案内人は必要ないやん。それにいくら篝火はんとシオリンが一緒だったとしても逃げようと思えば、戦おうと思えばいつでも戦えるし、なんなら自分らの力なら倒せたんちゃう?」
「いや、そうはうまくいかなかっただろうな、だからこそ一緒にいる。そういうことだよ」
「なんやねんそれ」

 榴華は眉をひそめる。遊月の言いたいことが理解出来なかったからだ。

「まぁ、簡単にいえば、朔夜は短気で喧嘩っ早くてめんどくさがりやで腕っ節度零だけど頭はいいし、頭の回転も速いってことだよ」
「んー自分にはようわからんわ。第一サクリンは一緒に行動していなかったやん」
「何れわかる時が来るかもしれないぜ」

 遊月はそこで会話を区切る。つまりそれ以上は語るつもりがないということ。


「朔、久しぶりだね」
「今までよりは久しぶりじゃねぇだろ」

 悪態をつきながらも朔夜の顔は嬉しそうだった。栞と出会えていることが嬉しいのだろうか、微笑ましいなと篝火は思いながらあることに目が言った。

「朔夜、お前髪の毛絡まっているぞ先の方」
「あ? だってお前がいなかったんだから当たり前だろ」
「ちょっとこい、手串だけどとかす」

 朔夜の絡まっている髪の毛が気になり髪の毛をとかし始めた。当然のことながら櫛は持っていないため、手でとかしているが、それでも数分もたてばサラサラと流れるようになった。

「よし」

 その様子を傍らで見ていた栞は苦笑する。

「篝火って朔のお母さんみたいだね」
「せめて保護者どまりにしてくれ……昇格はいらない」
「?」
「こっちの話だ」

 本来なら最果ての街の道のど真ん中で和やかな雰囲気をするものではないが、それでも一時の再会に安心していた。


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