零の旋律 | ナノ

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 壁際に追い詰められた青年は震えた。紫かかった黒髪の青年と銀髪の青年が並ぶが、それよりも眼前にいる金髪の青年が恐ろしかった。

「ねぇ、レインドフを狙っている輩の情報について話してくれないか?」

 口元は笑っているのに、目が笑っていない。優しい口調なのに威圧感しか感じない。
 何とも感じていない無表情な青年二人の方がまだ――ましだった。


 時は数分前に遡る。
 レインドフ家近郊の街サエアスで始末屋当主アークと執事予定のリテイブ、庭師のキルセが並んで歩いていた。何とも最初二人が物騒だなぁとキルセは両手を後ろに回しながら思う。
 聞き耳を立てながらキルセは『――ドフ』を耳にした場所周辺をひたすら歩いた。
 暫くして、痺れを切らしたのかリテイブが

「その辺にいる同業者適当に捕まえて吐かせればいいだろう」

 と物騒なことを言い放った。

「いやいや、確実かどうかわからないのに荒事は控えろよ」

 キルセが苦笑しながらなだめる。

「俺は別にどっちでもいいけどな」

 そしてアークがどちらでも構わないと告げる。
 結果として言えば、リテイブの案が採用されることはなかった。その数分後、『レインドフ』の単語を不用心にも独り言として呟いてしまった不運な青年と出会ったのだから。

 そして時は現在に至る。

「わ、わ、わかった。わかったから命だけは助けてくれ!」
「いいよ」

 青年の懇願に、あっさりとキルセが同意をしたので、男はペラペラとキルセにとって必要な情報を露土した。
 守秘義務とか秘密主義とかそんな言葉は存在しない勢いで情報が開示されていく。

「――というわけだ。俺が知っている範囲はそれだけだ!」
「本当に全部?」
「ぜ、全部だ! 全部です!」
「ありがとう」
「え――」

 お礼の言葉と共にクナイが脳天を貫く。
 絶望の表情を浮かべ一瞬のうちに青年は絶命した。
 何事もなかったかのようにキルセは対象の命を奪ったそれを閉まった――『有難う』といった柔和な表情のままで。

「意外だな」

 リテイブが悪人の笑みを浮かべながら問う。その言葉の意味を明確にキルセは理解する。

「口約束の何処に保障があるんだよ?」

 リテイブの方を振り返ったキルセの表情はやはり笑みを浮かべていた。

「へぇ……お前は人殺しとか躊躇するタイプだと思っていたよ」
「別に敵を生かして置く必要性を感じないだけさ。さっいこう」

 手に入れた情報は間違いなくレインドフに害がある情報だった。キルセは先導して進む。アークはキルセの行動に慣れているのか、眉ひとつ動かさず続いた。

「(何が結構“普通”だ。全然普通じゃねぇだろうお前)」

 リテイブは冷笑してから、前二人に続いた。


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