V 翌日、午前八時を回ったところで、リィハが屋敷に戻ってきた。 既にレインドフ家の面々は起床しており、朝食も済ませ各自、暇していた。 「おかえり、リィハ」 「おかりですー」 キルセとリアトリスが最初にリィハが戻ってきたことに気がつき、その声を聞きアークとカトレアが現れた。 「リテイブは?」 「部屋に籠っている」 「料理人は?」 「殺した」 「そうか。……は!?」 流れる会話の途中、物騒な単語が含まれていて一度は納得しかけたリィハは、思わず杖を手から落下させた。落下した杖は床に激突する前にリアトリスが片手で受け止める。 「 アーク、俺の聞き間違えか? 今“殺した”って聞こえたんだが」 「殺したっていったけど」 「お前っ! 一日もたってねぇ料理人を殺すなよ! 馬鹿か? いや馬鹿だったな! なんで俺が戻ってきたら既に料理人生きてねぇんだよ!」 「馬鹿連続しすぎだろ。毒」 「は? 読? 読書が気に入らなかったのか? どんな悪趣味していたんだよ」 「違う違う。料理に毒を仕込んできたんだよ。だから殺した」 「成程……恨み買ってんなぁ始末屋だから仕方ないか」 毒を入れた料理人が生きてこの場にいるはずはないか、と今度はリィハも納得した。 「にしても毒を仕込んできても誰も死んでないあたりしぶといよな」 その言葉について思うところがあるのか、キルセがリィハの肩を両手でつかんだ。 「リィハ、聞いてくれ! しかも、だ。リアトリスとリテイブのリコンビは自ら毒の料理を文字通り毒味したんだ。馬鹿だよな!」 キルセは同意を求めた。キルセはリィハのゴロツキに負ける程に弱くはないし、リテイブの攻撃を交わせる程度に強いが、毒の耐性がない程には普通だ。 「はぁ? 馬鹿じゃねぇの。今度から三馬鹿っても呼べばいいか?」 「呼んでもいいですけどーその頃リィハはこの世にいないですよー」 「……止めます」 みじん切りにされるのは御免だった。 「リィハってホントヘタレですよねー意気地なしー」 「……お前らが規格外なだけだ」 「まぁリィハのどうでもいい話は置いといてですー」 「置いておくな! あ、いやいい、置いとけ」 「どっちなんです、めんどくさいですね。やっぱり細切れにした方がいいですかね」 「止めてください」 リィハは土下座をしそうな勢いだった。発言を間違えただけで細切れにはされたくない。 [*前] | [次#] TOP |