零の旋律 | ナノ

BloodySnowU


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 薄暗い部屋は王室を彷彿させるかのような作り、それはまさしく絶対の王と呼ぶにふさわしい玉座であった。深紅の色は宝石の如く何にも代えられない唯一絶対の『色』が彩る。
 玉座に座る『絶対の王』の隣で守護神の如く存在する彼は絶対の王へ話しかけた。

「レガリア様」

 絶対の王、その名はレガリアと言う。深紅の髪と瞳をもつその色はこの世に類を見ないほどに美しい。何より絶対的な自信に満ち溢れたオーラは見る者を魅了させる。

「何だい?」
「……いいのですか?」

 何をと問わずしても意味は寸分の狂いなく伝わる。

「ふむ、別に構わないさ。一時のことくらい。それに、結末は変わらないよ。そこにたどり着くまでの過程は幾つもあるが、しかし結末は何時だって一つだからな」
「レガリア様がそういうのならば、俺は何もしなくていいですね?」
「あぁ。さしたる問題は何も起こらない」

 守護神の如く存在する腹心の部下である棟月はお辞儀をする。
 全ては絶対の王の采配によってきまる。彼が別に構わないと申すのであれば棟月が何か実行に移すことは必要ない。
 ただ、傍観に徹すればいいのだ。何かあれば全て絶対の王が命じてくれる。
 棟月は全ての忠誠を絶対の王へ捧げている。
 絶対の王が自害しろと言えば、躊躇なく手元にある槍で自らの命を絶つ。
 否、それは棟月に限ったことではない。


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 ウィクトルとアミークスが仕事を終え、本部に帰還する。明日の作戦会議があるため、ウィクトルやアミークス以下、異端審問官が玉座に終結する。

「異端者組織イーデムは二年ほど前から急速に力をつけてきた組織だ。油断はしないでほしい。組織イーデムは箱庭の街を自由にしようとしている、それは我らの行動に反する行いだ。寄って、明日の明朝――壊滅させる」

 組織イーデム壊滅の実行部隊リーダーを任された精悍な顔つきの男が述べる。
 返答はないが、それらは全て肯定の意だ。この作戦は絶対の王が決めた作戦だ、意を唱える輩はこの異端審問官には存在しない。
 絶対の王が白だと言えば、黒は白になり、黒だと言えば白は真っ黒になるのだ。
 絶対の王が静寂な空間で口を開いた。

「イーデムの実力は相応にある。だが、結果は何も変わらない。そう――イーデムが壊滅するという未来は揺らがない。さぁ生きて戻ってこい」

 異端審問官は歓喜する。絶対の王がそう言えば全て間違いはない。
 自ら疑問を抱くことのない、傍から見れば狂信者にしか映らない異常な空間も、異常な空間に身をおけばそれが普通で当たり前になり変わるのだ。
 誰も疑問は抱かない。
 ただ、絶対の王に従うだけだ。
 全ては絶対の王の御心のままに。


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