零の旋律 | ナノ

RevengeU


 織氷は鍛え抜かれた脚力で階段を駆け上がり、上階へたどり着いた先で、最上階へ足を踏み入れようとするクロアを発見する。迷わずに銃弾を放つと、それは空振りだったがクロアが足を止め、此方を振り返った。

「全く、僕の邪魔をして生きていられると思うな」
「それは此方の台詞よ。ウィクトルも時期にあの男を殺して此処へ来るわ」
「そんなことはない。僕の標葉は負けない」
「……聞きたいのだけれど、貴方の冥土の土産にでも教えてくれないかしら」
「何だい?」
「貴方、本当は脱走に成功した暁には執行官を殺すつもりだったんじゃないの――?」

 淡々と、確信を持った問いにクロアは

「そうだよ」

 驚きもしなかった。

「やっぱり、そうだったのね」
「当たり前じゃないか。執行官は僕ら実験体の敵だ。脱走に成功したら僕が殺すつもりだった」
「なら、何故貴方は今日まで標葉と一緒にいるの? あまつさえ“僕の標葉”と、貴方のモノにしている」
「そんなものは簡単だ。君たちが現れたからだ。標葉が君たちの刃から僕を守ってくれたからだ。左目を犠牲にして、僕を守った。だから僕は標葉を殺そうと思わなくなった、それだけのことだ。満足していただけただろうか?」
「成程ね、確かに理にかなっている。違和感はないわね。疑問が解けたわ、お礼に貴方も聞きたいことがあるなら、冥土の土産に教えてあげるわよ」
「特にないね。僕にとっての目的は復讐だ、それ以外にはない」
「そう。じゃあもし出てきたら教えなさい。それくらいのフェアはしてあげるから」

 淡々としていた織氷が妖艶に微笑む。残酷に、目の前にあるものは全て道に捨てあるごみを見るような瞳。冷酷で無慈悲。異端審問官としての顔であり、それは織氷の人を殺す時の顔だ。
 両手に握るリボルバーの重みは感じない、反動はもう忘れた。そう錯覚させるほど、今の織氷は銃と一体化していた。
 クロアが浮かべる狂気な微笑み。周囲に拡散する美しき結晶が舞う。死へ誘う光として襲う。
 織氷は結晶が突き刺さる瞬間後方に飛ぶ。そして壁に足をつけてばねとしさらに空中へ飛ぶ。空中で回転しながら銃をクロアへ向けて連続で発砲する。クロアはそれを自分の前に結晶を出すことで防御する。織氷は華麗に着地するとそのまま駆けてクロアの元へ出る。織氷が回し蹴りを繰り出す。クロアは結晶で防御しながら先端が尖った結晶を飛ばす。織氷は首を逸らしてそれを交わす。当たることのなかった結晶は壁に突き刺さった。
 双方距離を取る。深追いはしない。
 相手を確実に仕留めるために最善の方法を導き出そうとする。


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