零の旋律 | ナノ

V:FriendT


 爽やかな空気、晴れ晴れとした空、燦々とした太陽、何よりメリーゼと遊べることがクロアを高揚させる。
 待ち合わせ場所の時計台に辿り着くと、既にメリーゼが両手を重ねながら待っていた。

「待たせた?」
「ううん、大丈夫だよ。私もさっき着た所だから」
「なら良かった。じゃあデートをしよう」

 差し伸ばした手をメリーゼは掴んだ。
 人の温かい温もりを実感する。
 是が初めての同世代の友達への愛情だった。

「メリーゼ、こっちのお店は前に標葉と食べに来て美味しかったんだ、行こう」

 クロアは標葉が連れて行ってくれた中で特に楽しかった場所を厳選してメリーゼを先導――引っ張る。
 無邪気に笑うクロアを眺めるだけでメリーゼも楽しかった。
 店内に入るとカントリーな雰囲気の家具で統一された中に愛らしいぬいぐるみが並べられていて、それが安らぎの空間を作り出していた。
 クロアとメリーゼはデザートをそれぞれ注文する。クロアは特盛り林檎パフェで、メリーゼはモンブランだ。

「ほら、食べると言い」

 そう言って、クロアが頼んだ特盛り林檎パフェを一口分スプーンに掬ってメリーゼの前に差し出す。

「え?」
「ふむ、何故だ。標葉もこれをやると固まるのだが……食べてはくれないのか?」
「ううん、頂くよ。それと標葉さんが固まるのは多分恥ずかしいからだと思うけど」
「恥ずかしい何故? 美味しいじゃないか」

 本気で理解していないクロアにメリーゼはやや頬を赤くしながら差し出されたそれを食べた。

「(クロアは人目を気にしないタイプなのかな)」

 メリーゼはそんなことを本気で思った。いくら同性とは言え、周りの目線が気になって仕方がなかった。その後メリーゼはクロアの要望で同じことをクロアにしてあげることになった。
 次に向かった先は洋服店だ。

「これメリーゼが着たら似合うと思うんだけど、どうだい?」

 クロアの好みからか、ゴシックロリータ―の雰囲気が漂う店だった。
 白のふんわりとし、落ち着いた優しい印象を与える服装を着ているメリーゼは店内では目立って仕方がなかった。落ち着きなく周囲をきょろきょろと見渡していると、是はどうだろうと次から次へとメリーゼに着て欲しい服を選んで来るクロアの堂々としたあり様がメリーゼには羨ましかった。散々クロアがメリーゼへ服を進めてきたが、その店で服を購入することはせずに、街をふらつく。
 夕刻になり、空が赤く染まり始めた。明日は晴天だ、ふとメリーゼは空を見上げて思う。

「今日という日は僕にとって楽しい一日だった。有難う、メリーゼ」

 別れの時間が凄くおしい。


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