零の旋律 | ナノ

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「そうですよ」
「じゃあ僕と同い年だ」
「クロアも十六歳でしたか」
「むむう……」

 しかし、突然頬を膨らませたクロアにメリーゼは何か問題発言でも? と首を傾げる。

「ずるい」
「何がですか?」
「君の胸だよ。僕と同い年なのに、この差は一体何なの」

 そう言ってクロアはスプーンでメリーゼの胸をさす。

「さ、さぁ」

 メリーゼは苦笑するしかなかった。メリーゼの十六歳とは思えない豊満な胸とは対照的に、クロアの胸は殆ど平坦であった。

「ずるい。僕にくれればいい」
「いえ、ちょっと上げられないと思います」
「なら、メリーゼは今日から僕の敵だ」
「胸だけで敵にするな」

 そうして本日何度目かの標葉の手がクロアの頭を叩く。

「僕が馬鹿になったらどうする!」
「大丈夫だ、もうお前は充分馬鹿だ」
「酷い、僕はまだ十六歳だ、成長の見込みはある! もちろん胸もだ!」
「大声を出すな、恥ずかしい」

 再び標葉の手がクロアの頭を直撃した。

「……うぅ」
「標葉さんもクロアも楽しい方ですね」
「そうだ、メリーゼ明日は暇かい?」
「明日?」
「もしよかったら明日僕とデートしよう!」
「いいですよ」
「本当かい!? 嘘をついたら針を千本飲んでもらうよ」
「嘘なんかじゃないですから」
「じゃあ約束だ」

 破顔一笑をしながらクロアが指を差しだしてきた。指きりの約束だ。メリーゼもそれに応じた。
 その後も談笑をして、約束通り標葉の奢りで会計を済ませる。外に出ると日が暮れてきたので、今日は解散となった。
 明日は朝から遊べるようにメリーゼとクロアは待ち合わせの場所も決めて“約束”をする。
 クロアは浮かれて道中スキップをしていた。

「楽しそうだな」
「勿論だよ。僕にとって初めての友達だ」
「良かったなって俺は友達じゃないのか?」
「標葉は……何だろう、恋人か?」
「ええええっ!?」

 流石の標葉も今のクロアの発言には動揺を隠せなかった。

「何をそんなに驚いているんだ? 一緒に住んでいるのだろう、それはそもそも同棲? という奴だろうが」
「……お前は常識を先に覚えろ! そんな言葉は覚えなくてよろしい!」
「何故だ? というか何故そっぽを向いているんだ? 僕に何か後ろめたいことでもあるのか?」
「いや、そういうわけじゃないから……」
「なら僕の顔を見るといい。前にテレビの『戦隊カレンダー』でやっていたぞ、やましいことがある人は人の顔を見れないと」
「だからお前はその前に常識を覚えろ!」

 そんなやりとりが帰宅する前で続いた。


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