零の旋律 | ナノ




担当:緋夜


 魔石商人が根城にしている場所へ一向は到着する。
 建物は魔石でさぞ儲けたのだろうそれは貴族邸と紛うほどの豪邸だった。
 アークは門に設置してある門燈を武器に突撃しようとしたので、慌てて背後からシェーリオルが首根っこを掴んだ。

「待て。結界がある。一応――出来る限り隠密に進みたい。魔石を持ち逃げされたら困る」

 尤もな言い分に破ること専門な三人はシェーリオルの道を譲る。
 屋敷全体を守る結界の前に立ち軽く指を弾く動作をすると、アイリスの魔法陣が具現する。すると、眼に見える形で結界の全貌が現れた。
 アイリスの煌々とした光が結界全体を覆うと、途端に結界は存在しなかったように霧散する。

「これで結界は問題ない」
「では、行こうか!」

 アレックスの爽やかな言葉に頷いて、アーク、アレックスを先頭に祐未とシェーリオルが続く。
 並んで歩いていた祐未はシェーリオルの髪留めにしている魔石をちらりと見る。

「やっぱ便利だなよな、それ。しかも発動する時に魔石が輝くって綺麗じゃん」
「なら、魔導でも教えようか?」

 しかし、祐未が返事をする前に、シェーリオル以外がほぼ同時に歩みを止めた。シェーリオルは勝手に危険を知らせてくれて便利だと内心で呟く。

「何、敵にでも気がつかれたか?」
「そのようだね」
「じゃあ、突撃でもするか」
「門燈でかよ……」

 シェーリオルは呆れつつも、前方で銃を構えているアレックスと、門燈を持つアークの光景が奇妙で笑えた。


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