零の旋律 | ナノ

精霊王に祝福されし真秀場の世界


 精霊王に祝福されしこの世界。儚く、幻想的で脆い。彼の地に降り立つ者は、この世界をそう評した。
 精霊世界リティーエ
 彼の地に降り立つ者が生を受けて初めて見た景色は聖域だった。

 精霊が謳い祝福を世界に授ける。人と精霊が共存した世界、それが祝福されしこの地。
 私は思う、この世界はまるで『夢』のようだと。

 夢幻の世界、その中で、ふと現実を回帰した時、この世界は儚く散りゆく。
 掌をすり抜けて遥か彼方へ飛び立つのではないかと。
 それが私には酷く恐ろしい。
 以前、精霊の王にそう告げたことがあった――夢現の中で。

『心配は不要。私がいる限り、この世界は決してなくなりはしない、未来永劫私が守る世界だ』

 精霊王に加護されしこの世界。
 自然に愛された、美しきまほろば。
 儚く、幻想的で脆い、悠久の地

『私の世界はなくならないよ』

 そう、精霊の王が告げるのならば

「お前が世界を守るのならば、私は世界を守るお前を守る」

 私は頭を垂れる。
 偉大なる精霊王は神聖な存在であり、この世界リティーエは何人たりとも侵略してはいけない聖地なのだ。
 それを侵略するものがいるのならば、それを略奪しようとするのならば――何人たりとも私が許しはしない。

『――有難う』
「当たり前だ」

 精霊王から授かりし言葉は聖人君子誰よりも心に浸透する。
 精霊が謳い、世界に祝福をもたらす世界リティーエ。

 精霊と人間の共存の天平が傾いた時、私は――精霊のために人間を抹殺しよう。

 脆く、幻想的で儚い世界が永久にあり続けるように、あり続けるために。


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