零の旋律 | ナノ

V


「じゃあ、僕がエントリーするよー。因みにいつ出るの?」
「今日のエントリーですと明後日の出場になりますね」
「へー人気なの?」
「優勝出来れば一攫千金ですからね」
「成程」

 シャルはペンを受け取り、申込用紙に名前をさらりと記入した。シャル、とだけ。

「闘技場を観戦しますか?」
「いや、いいよ」

 女性の言葉にシャルは間髪いれず返答する。
 別に人と人が殺し合う舞台を見ることにシャルは興味を抱かない。それが好きな人間が勝手に高みの見物をすればいいのだ。

「じゃあ、アイちゃんにレストに氷室、街を観光しようよー。どーせ明後日まで暇なんだし」

 シャルの中では優勝はもう確定しているようなものであった。しいて言えば明後日自分の番が来るまでに誰かが優勝をする、その可能性だけは否定できない。だが、その時はその時だ。
 闘技場の外に出れば歓声が聞こえてきた。対戦中なのだろう。
 人を殺して眺めて喜ぶ、その感情をアイは理解できないし、したいとも思わない。

「氷室達はどうするのー? 僕は少し武器屋にでも行こうと思うんだけど」
「武器? 何か買うのか?」
「んー折角だし、なんか武器買って試そうかなぁと明後日」
「余裕だなぁ」

 レストは乾いた笑いを洩らす。何処までもこの暗殺者はマイペースだ。

「じゃあ俺とレストはリエル・ハーシェルでも探すかな」
「ん。じゃ、一時間後に闘技場の前集合ってことでいいかな?」
「わかった」

 シャルは、いこっアイちゃん。といって抱きついてから歩き出した。その反対の方向にレストと氷室は進む。


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テーマ「人外ファンタジー」
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