V 元来た道へ戻ってから進んでいると、繁華街から外れて徐々に道が閑散としてきた。 「ほんと、街外れにあるんだな」 「うん、街外れだよー」 途中からは整備された道だけがあって、一軒も家が見つからなくなってきた。 「……何で家がないんだ?」 流石に、整備された道があるのに言えが全くない道にレストは疑問を抱く。 「あぁ、それはもううちの敷地だからだよー」 「……は?」 レストと氷室は思わず足を止めた。遠くには確かに豪邸と思しき屋敷が見えてきているが、まだ此処は道の途中だ。 「だから、家が一軒もないんだって」 シャルは何故レストと氷室が歩みを止めたのか理解できないようだったが、大体の心境がわかるアイは額に手を当ててシャルの行動に対してため息をひとつ。 「ほら、もう少しだよー」 一人スキップしながら歩き出したシャルの後ろ姿を見ながら、氷室とレストがアイへ詰め寄る。 「ほんとあいつ何者!? どんだけ金持ちなんだ!?」 「見たまんま?」 「……まじ、なんだし」 「おーい! 置いていくよ!」 何処までも無邪気なシャルは途中で三人がついてきていないことに気がついて、後ろを振り返って呼ぶ。慌てて三人はシャルの後ろに続いた。 門が見えてくると同時に、広々とした庭園、そして白の豪邸が目に入った。 「うわーまじで、豪邸だし」 レストは是だけの豪邸を有している実家ならば、霊石があっても不思議ではない心境になった。氷室も同様だったようで、徐々にあくどい笑みを隠せなくなってきた。 「ただいまー!」 玄関に入ると、執事と思しき人物が急いでやってきた。 「おかえりなさいませ」 「ただいまー、お友達連れてきたから」 「左様ですか、何かご用意しましょうか?」 「うーんお昼食べてきたばっかだからいいや」 「かしこまりました」 丁寧なお辞儀をして執事は邪魔をしたら悪いと即座にその場を離れた。廊下を歩く度に、すれ違った屋敷に仕える人間がみな一様にお辞儀をしてくるもので、レストは居心地が悪かった――恥ずかしくて。廊下を歩きだして暫くしてからシャルが歩みを止めた。 「ここだよー」 シャルがクルリと半回転してから指差した先には硝子のショーケースに入れて飾ってある霊石があった。この世のものとは思えない乳白色の淡い輝きを放つ美しい石――霊石を、この時初めてレストは目にした。 霊石――本物だ、氷室は霊石に出会えたことへの喜びを感じていた。 「本当に飾ってあんだな」 氷室の言葉にシャルは頷く。氷室は手を伸ばそうとした――奪うために。人目を憚る必要は特に感じられなかった。しいて言うのならば、自分の能力を隠しているレストがいたが、それでも隠しておくよりも霊石を手に入れる方が優先だった。 [*前] | [次#] |