第五話:得体が知れない その後は特に問題も起こらず別大陸――ルクセシア大陸に到着した。ルクセシア大陸の都市ルクセシアの港。船から降りると街は活気に満ちていた。商人がずらりと店を構えている、観光客用だろう物が目立つ。 「流石の賑わいだな、ルクセシア大陸の首都は」 氷室は華やかに活気ついている都市ルクセシアを見て言った。今までいたメイル大陸のどの街よりもそこは賑わっていた。ルクセシア大陸は王都が存在する大陸とはまた別だが、王都と並んで二大大陸と呼ばれる程の面積を有している大陸であった。 「そりゃねー。さて、うちはちょっと此処の街外れの方にあるんだ―」 シャルが背中に手を回しながら無邪気に答える。ようやっと霊石にお目にかかれると思うと氷室の視線は自然と鋭くなる。それを横目でアイは見ながらも別段不安は何一つなかった。 例え、氷室が得体のしれない契徒だったとしても、アイにとってはシャルの兄の方が恐ろしかったのだ。レストは周囲が珍しいのかきょろきょろと忙しなく見渡している。 「あはは、レストは何か珍しいものでもあった?」 「あれは……なんだ?」 レストが指差した先には、ひと際目立つ高い円状の建物があった。 「あぁ、あれは風車だよ」 「風車!? あんなにでかいのか?」 レストの知っている風車とは規格も形も違った。 「うん、あの建物の中に風車が設置されていて、建物にはいくつもの細かい窓があいているんだ、そこから僅かに入ってくる風と、精霊術で風を中で循環させて風車を動かす仕組みになっているの。傍目にはそう見えないからよく観光で来た人は驚いているね」 「成程な」 「さて、お昼にする? それとも僕ん家へ急ぐ?」 「お前ん家だ」 「よし、お昼にしよう!」 「質問した意味ないだろ!?」 「いやだって、氷室が即答してくると急にお腹が空いてさ、途中にある店に寄るから時間はかからないよー」 氷室の間髪いれない即答にシャルは苦笑しながらも――以降に霊石に拘る氷室に対して不信感を抱いた様子はなかった――じゃあ、こっちねと案内を始めた。氷室は不承不承ながらもついていく。街中を歩いている途中、やや目立つのか時々視線が集まる。 「あはは、流石に契徒が二人もいたら目立つねー」 しかし、シャルは呑気だった。基本的に細かいことには気にしない性質なのだ。 「そりゃな、契徒なんて一人いても目立つのに二人もいりゃ不思議じゃないだろ」 「俺としてはあんまり視線を集めたくないけどな」 「それはお前が契約者だからだろ? 契徒なんてどこにいても目立つっての」 氷室の言葉に、レストは頷いた。外見上は契徒もリティーエの民にも違いは見当たらない。ただ、服装が違うのだ、それだけで契徒だと判明する。 [*前] | [次#] |