零の旋律 | ナノ

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 数時間後、ベッドの上でレストは目を覚ます。身体に痛みはない、夢かと思って自分の身体を見ると、それは夢出なかった。何せ痛みはなく傷がなくとも――服の破れだけは残っていたのだ。
 氷室はレストと同じ室内で本を読んでいた。レストが目を覚ましたことに気がついた氷室は、栞を挟んで本を閉じ、お茶レストに手渡した。

「目覚めたか」
「……契徒狩りは?」
「逃げられた」
「氷室が助けてくれたのか?」
「浮いて此処まで運んでやったんだ、感謝しろ」
「ん、有難う。シャルって子とアイちゃんは契徒狩り側の人間だったんだね」
「……あの二人は正確には違うとさ、雇われただけって言っていたな」
「そっか……俺、シャルに勝てなかった」
「相手が悪かっただけだ、気にするな」

 お茶をレストは一気に飲み干す。それがわかっていた氷室は最初から冷たいお茶をレストに渡していた。
 氷室はレストが倒れた後の経緯を嘘を交えながら話す。真実と嘘を巧みに混ぜることで真実を看破しにくくする。氷室の常套手段だった。氷室が契徒狩りを殺したという事実をそれで隠蔽した。

「本物の契徒狩りか……」

 レストは本物の契徒狩りの存在に一抹の不安を覚える。

「あぁ、この街にいた契徒狩りはコピーキャットにしか過ぎなかった」
「気をつけろよ氷室。その契徒狩りが本当に契徒を殺せるなら――お前の半不死的能力も意味をなさないんだろうし」
「わかっているよ」

 本物の契徒狩りが現れれば気をつけるのはレストではなく氷室だ。事実であるならば、本物の契徒狩りは、契約者を狙わず直接契徒を殺してしまう。
 氷の力を譲渡された今、氷室の戦う術は限られてくると。レストは知らない、氷室がレストに譲渡している氷以外の力を持っていることを。氷室も教えるつもりはなかった。

「結局目ぼしい情報は見つからなかった。最初に情報を掴んだ街へ戻るのも無駄足だし、此処から近い商業が盛んな街にでも行く予定だ」
「そっか。見つからないなら仕方ないか」
「あぁ」

 精霊石その存在を求めて、氷室とレストは全く情報が得られなかった状態のまま、この街を後にすることにした。契徒狩りの存在を頭に入れながら――


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