U 「成程。じゃあ氷室もそのうちの一人だったってことか」 「そういうことだ。で、なんで逃げたんだ?」 「そりゃあ、多分アイちゃんを狙っている輩がいたから逃げたんだよ。街中で騒ぎ起こすわけにはいかないしね。無事巻けたみたい、かな?」 アイを――自分たちを監視している人物がいるのに気がついた。それが街で噂の契徒狩りと結び付けるのは容易だった。そして、契徒狩りがどのような人物なのかわからないが、街中で騒ぎを起こすことはないだろうと安易な考えは持てなかった。情報が全然ない段階で、騒ぎを起こすような輩ではないだろうと判断する材料は何処にも転がっていない。 だからこそ、彼らの監視から逃れる目的や、仮に追いかけてきたとして戦闘になっても街に被害が出ないように街の外まで走ったのだ。 「……そっか、サンキュ」 「アイちゃんは気をつけて街まで戻るといいよ」 「わかった、じゃあ」 アイはレストに背を向けて街に向かって歩き出す。アイの姿が見えなくなった所で、レストは鞘から剣を抜きだした。太陽の光を受けて白銀のような輝きを見せる剣。 「さて、アイちゃんには嘘をいったけど、結果的には問題ないか」 契徒狩りを行っている人物が狙っている可能性は二通りあった。それは契約者である自分自身、もしくは契徒であるアイを狙っている可能性。 「目的は、アイじゃなくて俺か」 だからこそ、レストはアイと行動を共にせずに別れた。アイを狙うようならば、そのままレストはアイを助けにいく。けれど、レストが狙われているならば――アイを巻き込むことはない。 昨日、街で情報収集をしている時、レストは氷室と行動を共にしていた。その時に偶然、自分たちの姿を目撃されたのなら、レスト=契約者だとすぐに判断できる。 レストが剣を鞘から抜いて臨戦体形に入ったからか、三名の契徒狩りが姿を現した。 「リティーエの民と契約をしている契徒は、半不死の能力を得るからか? 契約者を狙ったのは」 「勿論、そうじゃないと――契徒は殺せないからな」 契徒は契約者と契約を結ぶことによって、契約している間は自身の固有能力をリティーエの民に譲渡する代わりに、半不死の能力を得ることが出来る。すなわち、殺しても死なない存在となるのだ。 「成程な」 レストは契徒狩りに近づき剣を振るう、剣からは氷の礫が出現し、剣を振るう度に、氷の礫が宙を舞う。それらは契徒狩りに直撃する。 「つってぇな……!」 契徒狩りも黙ってはいない。彼らの目的は契徒を殺すこと。各々の武器を持ってレストを殺そうと殺気を放つ。けれど、レストは彼らの攻撃を悉く交わし、あっと言う間に彼らを昏倒させた。 「……こんなものなのか?」 レストは倒した後、疑問が浮かぶ。この程度の強さしか保有していないのであれば、契徒狩りと恐れられるには到底至らない。レスト自身本気を出してすらいないし、契約術は氷の礫を使用した程度だ。 レストが疑問を持ちながらも剣を鞘に仕舞おうとした時、咄嗟に彼らから離れた。まだ、終わっていないのだと直感が告げた。そして、街の方から、十数名の武装した集団が現れた。 彼らもまた、契徒狩りだ。その中に見知った顔を見つける――。 [*前] | [次#] |