零の旋律 | ナノ

天空朱雀様からコラボ


世界の何処かにあると言われる、古代図書館。
広大な面積を誇るだけでなく、図書の所蔵量も桁外れで、まさに世界中の図書を集めたといっても過言では無い。

何階にも及ぶ図書館にて、レンリツは調べものをする為に本棚の海を練り歩いていた。
右を見ても左を見ても本棚ばかりがずらりと並び、本が苦手なものにとっては此処に居るだけで頭痛に襲われるに違いない。

「あ、この本が読みたかったんだ。やっぱりこれだけ大きな図書館だと調べものも捗る」

一つ一つ丁寧に背表紙に書かれた本のタイトルを読みながら、興味のある書籍を手に取ってゆく。
彼女は自らの魔術をさらに向上すべく、そして自らの目的の為に必要な技術を身に着けようと、こうして勉学に励んでいるのである。
その努力と向上心は称えるべきであろうが、その技術を用いて何を目論もうとしているのかは聞かない方が良いであろう。
何にせよ、レンリツが集めた本の背表紙には肉体の時を止める術やエンバーミングの技術についてなど書かれており、彼女が何を得ようとしているのかは一目瞭然であるが。

何時の間にやら手に取った書籍は山のように積み重なり、それを両手で抱えながら廊下を歩いていたのだが。
本の山のせいで視界が悪くなったのが災いしてか、それとも元来のドジ属性故か、盛大に転んでしまったのだ。
しかも蹴躓きそうな障害物が床に落ちている訳でも無く、純粋に何も無い所で転倒したのだからある意味始末に負えない。

「あーあ、折角集めた本が…」

足を挫く事は無かったが、代わりに抱えていた大量の本を床にぶちまけてしまったようだ。
服についた埃を払い落としてから、床に散らばった本を大事そうに拾い集めていた、その時であった。

「うわ、大丈夫? さっき凄い音がしたから何事かと思って来たんだけど…俺も手伝うよ」

「…それはどうも」

物音に驚いてたまたま近くで本を探していた青年が、一体何事かとレンリツの元へ駆けつけてきたらしい。
頭と背中に生えた真紅から黄へと移り変わる翼が特徴的な不死鳥の青年、ロッソだ。

レンリツと一緒に床に膝をつくと散らばった本を一冊ずつ拾い集めてゆくが、レンリツと言えば手伝って貰ったにも関わらずロッソには素っ気ない対応。
あくまで彼女が興味あるのは死者だけなのである。それはどんな時でも変わらない。

「これはエンバーミングの本、これは…生物の死に関する本? もしかして君って、人の生き死にに興味あるの?」

「“生き”には興味無い。私は死体にしか興味無いし、人が生きてる理由って死ぬ為だと思うんだよね」

何の迷いも無くきっぱりと一刀両断されて、ロッソは一瞬顔を引き攣らせる。

「そりゃまた極端な…。まぁでも、俺も生き物の死には興味あるかな」

「え、本当に? 人の死って素敵だよね、お気に入りの人を綺麗なままずっと保管出来たらいいと思わない? でもそういう、まさに死ぬ為に生まれてきたような人ってなかなか見つからないのが辛い所だけど」

同士を発見したと思ったのか、はたまた少しでも興味を持った者に死体の素晴らしさを布教したいのか、ともかくも先程までの冷め切った態度は何処へやら、瞳を輝かせながら熱心に自らの愛するものを語り出すレンリツ。
一方、話が良からぬ方向へ傾いてきたのを感じ取ったロッソは、若干話についていけずあわあわと困惑するばかり。

「ちょ、ちょっと待ってって…! 俺が言ったのはそういう意味じゃなくて。俺は死ぬ事が無いから、どんなものなのかなーってちょっと気になってさ。ほら、人って自分に無いものを欲しがったりするじゃん?」

ロッソの発言を耳にした途端、レンリツの眉が不可解そうに吊り上がる。

「…死ぬ事が無いってどういう事?」

「へ? だからそのままの意味だよ。見ての通り俺不死鳥だし、何やっても死なないんだよ」

レンリツの顔色の変化にまるで気づいていないらしいロッソは、何故そんな事を聞くのかと思いつつ素直に自分が不死の肉体を持つ事を告げる。
それを耳にするなり、まるで潮が一気に引いていくかの如くレンリツの中でロッソに対する興味が薄れていった。
心底興味無さそうな、感情の籠らない顔つきに一変する。

「はっ? 死なないんだったら何の為に生まれてきたの?」

「え、そりゃ生きる為に生まれてきたんだよ。てか皆そうじゃないの?」

「違う、人は死ぬ為に生まれてきたんでしょ」

「いやいや、それなら死なない俺はどうなっちゃう訳?」

「死なないなら存在価値無いよ」

「……! ナチュラルに俺の存在意義否定された…ひどいひどい」

「うん、だって私の中では死なない人なんていらないし」

「うぅぅ…やっぱり酷い」

何を如何言っても完膚なきまでに反撃され、ぐうの音も出なくなったロッソは終いにはしょんぼり顔から元に戻れなくなってしまった始末。
全く持ってロッソに無関心になってしまったレンリツであるが、ふと何か思いついたらしくこう切り出した。

「…ところで、本当に死なないかどうか試しに刺していい?」

「え」

「どうせ死なないんだからいいでしょ? これでうっかり死んじゃったとしても、しょうがないからそのままの姿で保管してあげてもいいし」

「え、え? いやいやちょっと待っ…」

「逃げないでね、逃げたら刺せなくなるから」

──ヤバい、本気で殺る気だ。殺る気の目をしている──…!
そう察したロッソが逃げようとするも、時すでに遅し。

図書館がその後、惨劇に染まったかどうかは定かでは無い。



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天空朱雀様宅のロッソさんと、レンリツのサイト擬人化キャラでコラボを書いて頂けました!!

死体にしか興味のないレンリツが通常運転ですね! ロッソさんに対する辛辣さとか、死体に興味があると勘違いした時のいきいきとした感じとか凄く素敵でした。
とにかく、ロッソさんはレンリツから逃げて下さい^^あと、ロッソさんのしょんぼりとした顔を思い浮かべるたびに可愛いなーとなりながら読んでいました。

この度は書いて下さり有難うございました!

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