昏様から奈月と李真 桃色の髪の寂しがり屋が、うずくまっているのを見つけた。フリルをあしらった黒い服の背が俺の目の前にある。 奈月の頭をただ黙って見下ろしてみた。桃色の髪の隙間から見える布の塊は、亜月というウサギの人形だろう。 「……なに?」 「おや、気付いていたのですか」 「何か用なの?」 うずくまり俯いたままの姿勢を変えず、奈月が問いかけてきた。 俺は軽い笑みの息を吐いて答えた。 「いえ、べつに何も?」 「だったら消えろよ」 「用がなくてはここにいてはいけないのですか?」 「邪魔だ」 「やれやれ。奈月、あなたは……」 口の端をゆがめて、言う。 「何を泣いているのですか?」 「っ!」 次の瞬間、奈月は振り返りざまに下方からナイフで切りつけてきた。 一拍早く後ろに退いたために、俺にはそれは当たらない。 返しざまにもう一撃が来る。 その手首を握って留めた。 「そんなにムキにならなくてもいいのに」 「――ッ」 「閖姫がいなくて寂しいのなら、私と遊びますか?」 すると奈月の可愛らしい造形の顔が、怒りだか悔しさだか憎しみだかわからないふうに歪んだ。 赤い大きな瞳には涙がたまっている。 「君となんか遊ばないよ。……やるなら、殺し合いがいいな」 「そう――か。じゃあ、殺す気で遊ぼう?」 奈月は複雑な表情のまま口もとだけをいびつに笑わせて、俺の手を振りほどいた。 終 ------ 昏様に奈月と李真の小説を書いて頂けました! 萌え満載の内容にときめきすぎて胸が苦しいです…! 李真酷い!(褒め言葉)閖姫がいなくて寂しい涙な奈月が可愛くて、李真の遠慮ない言葉に恋する勢いでときめいていました。李真の偽りと本性が絶妙で好みすぎます。 桃色の髪の寂しがり屋の部分とか、殺す気で遊ぼうとかの言い方大好きです…! この度は素敵な小説を有難うございました。 [*前] | [次#] |