零の旋律 | ナノ

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「ちょ、僕に君は死刑宣告でもするつもり!? いくらなんでも栞ちゃんが相手だと僕死んじゃうよ。今の栞ちゃんは殺すモードなんだから」
「勿論死ねとは言わないさ。俺が栞の攻撃を全て水渚の代わりに受けるから、水渚は栞を止めろ」
「わかったよ」

 水渚は承諾する。このまま栞に虐殺を続けさせるのは好ましくないのは水渚も知っているからだ。
 仮に銀髪に頼まれなくても水渚は僕死んじゃうよと口にしたが、それでも栞を全力で止めにかかっただろう。
 水渚は自分の周囲一面に無数の沫を展開させる。

「朔夜、今水渚と栞を止めるから。此処で少し待っていて」
「頼んだ。栞を栞を」

 一旦朔夜の元へ戻った銀髪の服の袖を掴んで朔夜はお願いをする。このまま栞が人殺しをし続けてほしくなかった。いつもの殺さずでいてほしかった。だからこそ、朔夜は銀髪にお願いする。
 切れた栞を手に負えるのはこの罪人の牢獄では数少ない。
 銀髪は銀色の粉と共に消える。

「水渚、聞くまでもないけど、栞との戦い方は心得ているよね?」
「勿論。だけど君はどうやって僕を守ってくれるのかな、栞ちゃんの攻撃を受けたらただでは済まされないよ」
「俺が君の影の変わりになる。……まぁ俺の術で多分なんとかなるはずだ」
「うわーそこに不安要素をたんまりと感じるんだけど。まぁ仕方ないか。じゃあ僕の命預けたよ――虚偽」

 水渚の沫が増える。一つの沫がはじけた。それは無数の沫をさらに作りだす。
 水渚と銀髪の存在を認識しているのか、していないのか栞は影の殺戮をし続ける。数多の罪人が血にまみれる。悲鳴渦巻くこの惨劇を作り出していく。

「邪魔するなら、誰だって殺すよ――」

 栞の影が――栞の攻撃が、全ての障害物等最初から存在しないよう切断する。切り刻む。殺す。亡くす。失わせる。
 水渚は沫を栞に向けて弾く。数多の沫は途中で全て真っ二つに切り裂かれる。しかし沫はさらに分裂して個数を増やす。
 沫が爆発する。栞はさらに影で沫を細部までは破壊する。分散能力の限界を超えた沫は増えることなく消滅していく。
 栞の猩々緋の瞳が水渚を視界にとらえた。光の伴わない殺戮だけを目的とした歪んだ瞳。
 栞の攻撃対象は仲間である水渚へ向かう。影のナイフが水渚の前に飛んできた。水渚は『影』を守ろうと回避行動をとるが間に合わない。その時、銀の粉による移動能力を持つ銀髪が前に躍り出る。途端、銀髪の右腕が吹き飛ぶ。しかし次の瞬間には何事もなかったかのように再生する。
 水渚の沫は絶えず栞へ向かって攻撃を続けるが、届かない。
 栞の影が水渚を殺そうと襲いかかるが銀髪に阻まれて届かない。
 いくら殺戮能力に特化している栞とは言え、不老不死である銀髪を殺すことは叶わないからだ。
 攻撃は絶え間なく続く。双方どちらも引かない。栞は笑っている。だが、その瞳には水渚は映っていても仲間である水渚は映っていない。
 転瞬、栞の姿が消えた。影を移動する移動術で現れたのは水渚の真後。水渚の影を利用して現れたのだ。


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