零の旋律 | ナノ

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「ついで?」
「あぁ、ついでだから安心しろ」
「お前の安心しろは、安心出来なないが」
「……全くやっぱり翆鳳院か鳶祗を連れてくるべきだったか」
「そういえば、現在翆鳳院はどうしているのだ? 白銀は銀色のサイドについているのだろう? 元が白冴であるがゆえに」
「あぁ。そうだ。白銀――朝霧や水霧たちも銀色についているぞ」
「水霧か、厄介だな」
「貴族に厄介じゃない奴なんていないよ」

 自分たちがそうであるように――とは続けなかった。云わなくてもわかりきっていること。身に染みていることだからだ。

「で、私に何をしろと? 朔夜のことをついでだ、というくらいなんだ。元々私の処を訪ねるつもりだったのだろう?」
「あぁ、その内容は――」

 朔夜は意気を飲む。予想外の言葉の羅列に。
 困惑する。何が目的で何が錯綜して、何が原因だ。
 否、原因なんて最初からわかっている。原因は『人間』でしかない。
 様々な要因が複雑に絡み合い蠢く現状で、多数の同じ原因は何の結果をもたらすか想像出来ない。
 何が起こるか全くわからない。想像も予想もしようがない。
 ただ、是が『人間』が仕出かした事に対する結末ならば。

 朔夜は銀髪が『正しい』なんて微塵も思っていない。銀髪がしようとしていることは自分たちが死ぬ為に世界を滅ぼすこと。例えどんな理屈や理由があっても、それが正当化されることはないと思っている。
 けれど、それは感情を排除して考えた場合であって、朔夜自身はだからと言って銀髪から離れようと思ったことはなかった。
 目的を知らされた時、驚愕はした。けれど、そのことを――自分も死ぬことを嫌だ、とは思わなかった。自殺願望があるわけではない、単純に銀髪の手伝いをしたいと思っただけのこと。

 篝火たちと例え敵になったとしても――自分の意思を貫きたいと。
 ――なのに。何で俺はこんなにも揺れているんだ。何を俺は戸惑っている。
 戦う決意をしたはずなのに、銀髪の傍にいると決めたのに朔夜の心は揺れ動いていた。
 もっと、みんなと一緒にいたいと思ってしまった。
 銀髪と一緒に居続ければ、水渚と千朱の笑顔を見ることも、篝火のパン好きに呆れることも、栞の優しさも、銀髪の顔を見ることも、何もかも叶わなくなってしまう。
 ――わかっている、銀髪はもう生きていたくない程長く生きている事を。
 銀髪が過ごした時間と絶望は図り知る事は出来ない。
 ――なのに、なんでだよ。


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