零の旋律 | ナノ

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 紫電が一直線に襲いかかる。稲妻が周囲を破壊する。榴華が拳を固めて殴りかかるのを双海は見極めてから軽く交わす。そして数歩下がり距離をとる。着地した地点で弓が飛んでくる。双海は指先で弓を挟んだ、急に腐敗したかのように弓は粉々に砕け散る。水波が放った弓だ。
 水波にとっても双海が此処から先、自分たちの敵に回る事は好ましくなかった。それゆえ、榴華の邪魔にならない程度の攻撃を試みる。弓筒から新たに矢を取り出す。

 榴華が紫電を纏まったまま空中で一回転しながら蹴りをかます。双海は距離をとり蹴りから逃げる。必要以上に近づかない。
 双海は一瞬だけ目を瞑って開く。榴華の周りを蔓が包み込む。紫電で一気に焼き払うと、ボロボロと蔓が地面に落下すると同時に消え去る。蔓が幻だったのかのように。
 榴華は地面に両足で着地してから、地面に手を当てる。紫電が地面を這う。
 双海は空中に飛び、地面を伝う紫電から逃れる。榴華は双海を追い越し、背後に回る。

「全く、強いね」

 双海は軽くため息をつくと同時に姿を消し別の場所へ着地する。栞の影を使った移動を思い出させるが、それとは別の気配を榴華は感じた。移動、とはまた別の――そもそも最初から存在しなかったのが急に具現したような感じを抱く。
 篝火はどうするか迷う。自分の実力は篝火が一番よくわかっているつもりだ。
 足手まといになることはない。けれど榴華と同じく接近戦を得意とする自分が加わってもいいものかと。
 紫電を扱う榴華の攻撃を交しきる自信はないし、紫電を当てないように榴華が篝火に気をつかうのも好ましくなかった。かといって水波のように弓を扱う事も出来ない。
 ただ、水波が弓を何発放った処で水波は悉くそれを無効化していた。水波の弓は双海には届かない。
 実力の高さが如実に現れている。榴華相手に全く引けを取らないのだから。

 突然榴華の周辺に淡い光を帯びた剣の形を纏った何かが榴華を突き刺すように具現する。咄嗟の判断で後方に飛び跳ねそれらを回避する。地面が生々しく抉れる。
 双海がどのような攻撃方法をしているのか篝火には判断出来ない。そして思う。
 どんなに罪人の牢獄が異端でも、犯罪者の集まりだといっても所詮狭い世界の中でしかないと。
 罪人の牢獄から脱出したところで、強者は沢山いる。
 犯罪者ではないが、罪を犯すことを厭わない狂人もいる。
 それを再認識させられる。罪人の牢獄にいないからと言って、その人が罪人ではないとは限らないのだから。

「けど――甘い」

 双海は榴華から常に一定の距離を保ちながら榴華の周りに蔓を具現させ捕えようと試みる。
 しかし榴華の紫電は高い攻撃力を誇っている。それを纏っている榴華に蔓は巻かさることはない。焼け焦げるだけだ。


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