零の旋律 | ナノ

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「君たちがどれ程私らの行動を滑稽だと笑おうと、どれ程憎悪しようと、どれ程――何をしようとも私らを君らが止める術はないよ」

 その為に――全てを成功させるために月日をかけてきたのだから、万全を期すために。
 最も万全を期すのであれば後数年の月日が必要だった。けれど、その計画を早めた。だからといって計画が崩壊するとは微塵も考えていない。
 何故なら役者はそろっているから、ただ相手側の役者もそろってしまっている、それだけのこと。

「君らの目的と私たちの目的が違う以上常に敵は存在する。存在して存在して……これ以上の無駄話には意味がないか」

 虚は口元を緩める。歪んだ笑み。銀髪とはまた別の狂った笑み。
 榴華は直感する。銀髪よりも――遥かに危険だと。
 自分の直感に従う、此処で信じるべきは他の誰でもない自分自身。

「お前は……お前にとっての全てはなんだ」
「愛しき弟さ」
「……」
「そして、死」

 虚と銀髪は血の繋がった家族、唯一無二の不老不死。
 共に永遠を共有してきた存在。

「君らには理解出来なくても構わないし、私たちが生きてきた時を理解されたといわれるのは不愉快だからねぇ、君の思いを私たちが理解出来る、といったら君は君で不愉快だろう? 自分の悲しみや怒り、憎しみが他人に図られてたまるものかってね、それと同じだよ」
「そうだな」

 柚霧を失った自分の無力感、憤り恨み憎しみそれらを我が物顔でわかったといって同情されたくはない。
 同情も慰みも同調も何一つ入らない。誰にも自分の感情を全て理解出来る事はないのだから、理解されたくもない。上辺だけの言葉もいらない。本当の気持ち等、誰にもわからない。だからこそ、榴華も理解しようとは思わない。寄り添う事はあったとしても。
 榴華自身、柚霧の事全てを理解していたとは思わない。ただ、柚霧の事が好きだっただけ。この世界の誰よりも。柚霧がいなければ榴華は自らの手で命を絶っていただろう、そう思っている程に柚霧が全てだった。だからこそ柚霧を奪った存在が何よりも許せない。しかし感情で動いた結果負けたのならば、理性を保つしかない。生きながらえた命を有効活用しなければいけない。ただ投げ捨てるだけでは復讐を果たすことが出来ないから。

「復讐をするために生きながらえるのは誰もが同じ事さ。死んでしまっては復讐することさえ叶わないのだから。復讐とは空しいことに生きる気力がないものに生きる気力を与えてしまう。復讐が全てとなってしまうのさ。最も私らは皮肉なことに復讐と言う動機をもっていようとも、生きる気力がなくとも生きてしまうというのだがね」

 復讐をするために生きるのではない、死にたくとも死ねないから生きるのだ。


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