V 「ふふふ、そう言ったものだよ。僕らとは違うしがらみにがんじがらめにされて動けなくなっちゃったんだ。昔……人々が大地を滅ぼした時から」 「人々が大地を滅ぼした時から?」 「そう。銀髪が人から作られた元は人間の不老不死ってのは知っているよね?」 「あぁ」 いつの間にか篝火が榴華の代わりに答えていた。 「嘗て、世界の文明は今より発達していたんだ」 「……」 「じゃなきゃ、現代では不可能な不老不死を作り上げる事なんて出来ないでしょ?」 「確かにな」 「まぁ大半は僕の想像でしかないから、当時の事を知っている当事者である銀髪か、全てを記録している翆鳳院家とかじゃないと事実を知りえる事は不可能なんだけど」 続けるね、と言って水波は自分が知りえた情報から繋ぎ合わせた推測を話す。 「発達した文明は大地を穢し、人々を住めなくした。人々は生き残る為に新たなる大地を創る事にした。それがこの大地。地下には自分たちが生きてきた大地を封じ込めた。新たなる大地を創る際、様々な面で圧倒的力を持って協力した人物がいた。彼らの協力がなければ大地を創る事は不可能だっただろうね。そうして大地は新たに作られ人々はそちらへ移住した。残った大地は人々を殺す大地として残したままにね」 「つまり、今ある貴族どもはその時の功労者?」 「半分正解。元々貴族だったっていう可能性も高いから僕にも事実はわからないけど、多分こんな処何だろうね」 「銀髪を不老不死にした研究者は? 雅契に関連するものか?」 現在最高峰の魔術を扱う雅契家、その雅契家ならば不老不死を作り上げることも不可能じゃないように思えた。しかし水波は首を横に振る。 「ううん。恐らくは違うよ。だってそうなら――雅契が何かしらしていても不思議じゃない。恐らく別の術者。別の研究者たちだった。しかしその血縁者は今や誰も生き残ってはいないだろうね。銀髪に殺されたのか自ら滅んだのか、誰かの手によって抹殺されたのかは知らないけど」 全ては水波の推測。しかし篝火たちにとって信じる価値は充分すぎる程だった。 「で、話しを戻すけど、銀ってのは白銀家の当主で双海ってのは銀に仕えているんだ。二人ともかなりの実力者だから油断するとあっさり殺されるよ、殺された事すらわからないうちにね」 「白銀……暗殺者か」 「そう、矛盾した暗殺者」 「矛盾?」 榴華が顔を顰める。矛盾した暗殺者とは何か。 「そもそもおかしいとは思わない?」 何が、という前に篝火が答えを導き出す。 「そうか、暗殺者なのに貴族、貴族なのに暗殺者」 「そういうこと」 貴族でありながら暗殺者。暗殺者でありながら貴族。魔術師や武術、記録、情報、治癒、騎士何をとろうとそれと暗殺者は同等ではない。貴族でありながら。そのおかし さ、不自然さに今まで気がつかなかった。 「最初からそう示されていると、疑問を抱きにくくなっちゃうよね、まぁ忠告はこの辺にしておいて、行こうか」 おもむろに水波は立ち上がる。 「……何処にだ?」 「西の外れ“リスシア”に」 [*前] | [次#] TOP |