第八話:選んだ道 +++ 朝日が昇る頃合い、篝火たちは人里離れた森の中にある、一軒の建物を訪れた。 そこは水波瑞が根城としている住処。泉から情報を聞いたことで、目的をそれぞれ定めた。 誰かが率先して、水波の場所へ行こうと口にしたわけではない。彼らは自然と水波の場所へ歩を進めていた。誰に強制されたわけではない、自分自身が選んだ道。 「そろそろ来る頃だろうと思っていたよ」 篝火が扉を開けると、泉とはまた別の見透かした瞳で水波は迎える。 「確認だけはしておこうか。君たちは僕が何かを知った上で、選んでくれたんだよね?」 「……俺は、もう一度朔夜たちと話がしたいだけだ」 大それた理由はない、ただ、朔夜や水渚、栞たちともう一度話がしたかった。それが篝火の思い。 「うん。それでいいんだよ、君は」 最初から篝火がそう答えると見透かしたように、水波は歳不相応の笑みを浮かべる。 「君たちはそれでいい。僕たちだって似たようなものだ。個々が其々の目的を果たす為に利害関係を結んだにすぎないのだから、例えそれが途中で形を変えようともね」 例えば、遊月と炬奈達のように。最初は自分たちの目的を果たす上の関係でしかなかった。 途中で切って捨てる事の出来る相手だった。 しかし、一緒に行動をすればするほどに、利害関係が一緒だから行動を共にする仲ではなくなった。 水波にとっては、徹頭徹尾、利害関係を結んだ間柄でも構わないし、利害関係から変ったとしても構わなかった。どちらに転がろうとも自分の目的を達成することが出来るのなら、その為の力となってくれるのなら歓迎した。 「榴華はやっぱり復讐せずにはいられないかな」 銀髪に、柚霧を殺した銀髪に。柚霧を殺させた――自分に。 「あたり前だ」 「だろうね、君にとっての全ては柚霧だ。だからこそ自分も許せないんでしょ」 見透かした瞳が榴華に苛立ちを募らせる。 「……」 その苛立ちさえも、水波には見透かされているようでいい気がしなかった。 自分の心は誰にも読まれたくないのに、心を読まれている錯覚に陥る。水波にはそんな力はないのに。 「で、千朱もやっぱり水渚ちゃんとは対面したいかな」 「あたり前だ。俺が選択したとはいえ、勝手に姿をくらまされて、はいそうですかって 納得出来るか。余計な気遣いは無用」 もう二度と会えないのは御免だ。だからこそ、自ら出会いに向かう。 「そう、僕だって似たようなものだから、それでいいんだよ」 ――もう出会うことも出来ないあの人。政府が斬り捨てた出来事を僕は許せない。 水波は刃を握った。自らの怜悧な頭脳を用い、最善の布石を並べる。 「水波はどうしてそこまで復讐に走る?」 篝火の素朴な疑問。 [*前] | [次#] TOP |