零の旋律 | ナノ

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 同時に、嫌でも理解する。泉夜と泉には繋がりがある。そうでなければ泉の情報を妨害することは叶わないだろう。
 篝火と榴華は一旦顔を見合わせた後、泉から情報を入手するためには一番いい方法だと判断し、泉夜に出会ったことを包み隠さず教える。
 泉は忌々しそうに舌打ちうした後、吐きすてるように言う。

「はっ、今さら何を」
「……泉と泉夜はどういった繋がりがあるんだ?」

 榴華は泉にさんづけをしない。それは自分を作って偽っていた時に使っていた云わば愛称のようなもの。素で接するのならば愛称で呼ぶ必要はない。篝火の事も篝火呼びだ。

「……俺の、……俺の父親だよ」

 沈黙の後の返答。驚愕の衝撃が襲うよりも先に理解が追いつかず、ゆっくりと泉の言葉を数度咀嚼してようやっと理解が追いつく。

「は?」
「え?」

 理解が追いついた処で信じられるか信じられないかは別物だ。
 だが、泉が嘘をつく必要は何処にもない。

「あいつは俺や郁の父親だよ。忌々しい」
「……成程」

 泉夜が泉の実の父親であるなら、瓜二つといっても過言ではない容姿、泉と錯覚させる雰囲気、それらは血縁だからこそと合点がいった。

「まだ生きていやがった……」

 血縁であれば、泉の情報収集を知っていても不思議ではない。
 むしろ同じである可能性の方が高い。同じ情報を司る――玖城家だ。

「本当に、今さら何をしているんだ、あいつは……。まぁいい、お前らが知りたがっていることを教えてやる」

 泉にとって、泉夜の情報は金銭や物を対価として要求するよりもずっと貴重であった。
 それに、泉夜の情報を対価としたのは他にも理由があった、今の篝火たちの状況では、普段泉が情報の対価として示す対価は払えないと踏んでのことだ。
 泉の思惑を知ってか知らずか、カイヤは扉を背もたれにし、面白そうに笑っている。
千朱は泉とは知り合いではない。会話に口を挟む必要はないと腕を組みながら沈黙している
 ただ、歪な場所である此処から一刻も早く立ち去りたいと思いながら。

「あいつらは何処に現れる?」
「……銀色か。今は夢現を根城にしているが」
「夢現?」
「人形屋だ。最も梓や雛罌粟等ごく一部の人間しか夢現に滞在していないがな」
「それはどんな場所だ」
「市街地にあるから止めておけ」

 先に釘をさす。榴華がどのような行動に出るか知っているから。

「へぇ、お前が他人を思いやるとは予想外だったよ」
「俺たちの邪魔になるから止めろといったんだ」
「わかっているよ、それくらい」

 泉が他人を気にする性格ではないことは知っている――とうの昔から。


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