第七話:懐かしの再開 「明日はどうする」 本来の口調で榴華は尋ねる。もとより何をするか明確な目的はあっても、明確な目的に辿り着くにはどうすればいいかがわからなかった。 「どうするか」 「そうだな……」 「……泉たちの処にでもいってみるか?」 「そうするか」 一つの案。榴華も同意する。千朱はそれが誰なのかわからなかったが口を挟まない。 泉の所在は知らなかったが、玖城家の所在地ならわかる。何せ四大貴族。 当てもなく彷徨よりも泉を――情報屋を頼った方が早いと篝火は判断した。 「なら、明朝一番で……じゃなくて今からいくか」 泉の性格を思いだし榴華は立ち上がる。泉は夜行性、明朝に言ったところで寝ているのがおちだ。 「そうだな、千朱大丈夫か?」 「あぁ、体力的には全然問題ない」 むしろ昔のことを考えればずっと楽だった。 「じゃあ行くか」 三人は玖城家を目指し歩きだす。玖城家は都市の中心部に位置している為、此処からは結構な距離があった。しかし体力に自信のある三人は道中休むことなく歩き続ける。 玖城家――の前で呆然とする。 「うわぁ、でかすぎだろ」 貴族が住まう土地は、他の場所とは一線を画す雰囲気が漂う。一般人では足を踏み入れがたいような、そこだけで完結した空間。 玖城家はその中でも他と交わることがなく、拒絶しているような隔壁が感じられた。 玖城家の屋敷は、泉や郁が黒を基準とした格好をしていたのと同様、大半が黒で形成されていた。 その風景は、魔王が住んでいても不思議ではない。 用があってもなくても近づきたくない場所、一瞬躊躇しながらも篝火たちは意を決し敷地内に一歩足を踏み入れた時、眼前に白の魔法陣が浮き上がり仄かな光とともに、一人の人物が現れた。 「……カイヤ!?」 篝火はその人物に見覚えがあった。忘れるわけがない。 夢華と似た相貌、白髪の髪には薔薇の髪飾り。無邪気な言動をしながら、言葉の端々に術者としての実力が感じられる雅契家当主、雅契カイヤ。 「ようこそ、玖城家へ」 カイヤに笑顔で迎えられた。 「何でお前が?」 「カイヤって……確か雅契のか」 榴華は以前遊月達と行動していた時の言葉を思い出す。 「ん、泉がそろそろ篝火たちがやってくるから連れてこーいって、酷いよねぇ人を使いぱしりにするなんて」 頬を膨らませる動作は何処までも歳不相応だ。 「まぁ勝手に玖城家の敷地内歩きまわっても、迷子になるだけだろーしいいんだけどねぇ」 「流石、情報屋だな」 言動は全てお見通しか、と榴華は心の中で笑う。 泉の実力にかかれば自分たちが何処で何をしていたのか、隅々まで調べる事が可能。 [*前] | [次#] TOP |