零の旋律 | ナノ

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 街の中にいる罪人を一通り倒した後、罪人を一か所に集め縄で縛り逃げだせないようにする。

「お疲れ様」
「お前もな」

 罪人の牢獄を脱出した後、現状を目の当たりにした彼らは一旦、街に滞在し横暴の限りを尽くしている罪人達の退治に回った。それでも三人で出来る事なんて僅かで、小さい街や村を回るのが精いっぱいだった。
 榴華は現在別行動している。榴華は一人で行動していた処で、実力面で何ら不安はない――それこそ不老不死に出会わない限りは。

「おや、変わり種がいたもんだね」

 声をかけられた。突然の気配に新手の罪人か――と篝火と千朱は同時に後ろを振り返る。
 後方数メートルの距離に三人組がいた。真ん中にいる人物は腕を組み、篝火たちを値踏みするように見ているが、その視線は不快なものではなかった。
 篝火は三人組の罪人を脳内で照らし合わせたが、記憶にはなかった。警戒した目で見ている篝火と千朱に

「安心しろ、私たちは罪人ではない」

 そう告げる。

「私の名前は雪城(ゆきしろ)だ」

 真ん中の人物が雪城と名乗る。何処か優美な動作で髪の毛に触れる。水色かかった白髪は綺麗で肩で揃えられている。水色の瞳は物事を見据えるかのように凛と。丈の短い黒いジャケットに、葡萄色のワイシャツには深紅色のラインが入っている。白いズボンの太股にはベルトが巻かれ短剣をしまってあるのがわかる。首には黒いチョーカー。端正な顔立ちが見る者を惹きつけるだろう。

「お前らからみて左側が槐(えんじゅ)、右側が海棠(かいどう)だ」

 リーダー各なのだろうか、両隣の人物も雪城が紹介する。何が目的か――と警戒は増える一方。
 警戒心を薄めるために、名前を名乗ったのだろうが、警戒が薄れることはない。

「……何の用だ?」

 千朱が慎重に尋ねる。罪人ではないのなら、自分たちに一体何の用があるのかと。罪人の牢獄に来る前の知り合いでは断じてない。

「別段用と言うものが君たちにあるわけではないよ。ただ、罪人を退治している稀有な人物がいたから話しかけてみようかと思ってね」
「信用出来ないな」
「そりゃあ、残念だ。まぁ仕方がない。私だっていきなり話しかけられてはいそうですかって納得する性質でもないからね」
「……」

 対応をどうするべきか千朱が迷っている時、雪城たちの後ろからのんびり歩いてくる見知った姿を見つける。雪城たちは気が付いているのか、気が付いていないのか後ろを振り返る事はしない。

「ん? なんだ知り合いか?」

 榴華が雪城たちを通り過ぎ篝火と千朱の方へ行きゆったりと問う。危機感はない。いきなり攻撃する必要は榴華にはないからだ。

「いいや、知り合いじゃない。いきなり声をかけられた」
「何だか私らは警戒されているようだね。まぁ仕方がないものもあるだろう。私らは偶々この地にいただけだからね。そろそろお暇しようか」

 さっぱりとした口調で雪城は告げる。

「なんだ?」

 榴華は首を傾げ、鋭い瞳で射抜く。だが雪城は苦笑しただけでおじける様子はない。
 榴華の鋭い視線をものともしない人物などそう多くはない。ただ者ではないとすぐさま判断する。

「先ほどよりも警戒されてしまったようだな。やはり長居は好ましくない」

 踵を返し、雪城たちは来た道を引き返して行った。

「一体何だったんだ?」

 後に残るは疑問。


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