V 「僕の名前は水波瑞、軍師水波瑞っていった方がわかりやすいかな?」 「――っ天才軍師!」 「天才って響きは僕、あまり好きじゃないんだけどね。まぁご名答」 軍師水波瑞、知らないものはいないとさえ言われる。その怜悧な頭脳を用いて数々の功績を上げてきた天才。 「君たちは最後に気がついていたでしょ? 僕が白き断罪と繋がっていたということに。まぁ勘違いして貰っては困るのは、繋がっていたのは白圭とだけで、悧智の訪問は予想外のことだったけどね」 「……」 「で、水波。この際後ろの二人のことは構わない。何故お前が此処にきている? どう考えた処で俺たちに用があったということだよな?」 黙った篝火の代わりに榴華が話す。その眼光は鋭い。琴線に触れれば一瞬で消し炭と化してしまいそうな危険さをはらんでいる。 「僕の仲間になってほしいんだ」 あっさりと、笑顔で水波は告げた。 余りにあっさりとしすぎていて、暫く面をくらった三人だったが、榴華がすぐに我にかえる。 「どういうことだ?」 「君たちだって知っているはずだよ。罪人の牢獄支配者通称銀髪が、今何をしようとしているのか」 「……つまり止めたいと思っているということか?」 「そんな馬鹿な事をするつもりはないよ。というか正確に言えば止めたいと思っているわけじゃない、僕の目的を達成する上で目の上のたんこぶなんだよね」 「……?」 「僕は政府を許せない」 へらりとした笑顔を止め、真剣な表情へ変貌する。 「僕は政府を許せない、政府に復讐をしたい。その為の手伝いを君たちにして欲しいわけ」 「成程、政府に復讐をするためには“あれ”の願望通りになったら困るわけか」 榴華がはっと嘲笑する。利用し、利用しあう関係。 「そう、それだけじゃない。三つ巴さ、滅ぼしたいと願う勢力は」 「どういうことだ?」 「国を許せず国を滅ぼしたいものたちが存在するってこと」 榴華たちが知らない事を水波は告げる。 「現在、勢力は四つに分かれている。当然政府。まぁ特に気にしなくてもいいよ。一つ目は僕ら、政府を滅ぼしたいと願う者たち、もう一つは国を滅ぼしたいと願う者たち――貴族衆。そして世界を滅ぼしたいと願う者たち」 「話が壮大になりすぎてないか」 黙っていようと思った千朱だが、話の内容に思わず言葉が零れる。 「まぁ普通なら荒唐無稽な話だよね。でも事実だ」 「何故」 「一言で言えば歪み。最初から存在していたどうしようもない捻じれまくった歪みが、ついに耐えきれなくなり破片をまき散らしたってところ」 「信じれと言われて、はいそうですかと信じられるものか?」 「信じられないだろうね。でも是ばかりは信じてもらうしかないし、君たちは実際銀髪が動いているのを知っているんでしょ?」 そう言われてしまえば何も言えなくなる。銀髪が動いているのは事実だ。罪人たちは銀髪の目的を知ってか知らずか――知らなかったとしても、銀髪のシナリオで駒として利用されている。 そうして、徐々に世界を滅ぼそうと駒を進めている。一歩一歩確実に。 [*前] | [次#] TOP |