V 「あいつは死を望んでいるからだ――」 榴華は唇を噛みしめながら、一言一言篝火たちに榴華が知りえた情報を伝える。その過程で柚霧のことも。 全てを聞き終えた後、篝火は黙とうするように目を瞑った後 「そんな目的の為に手を貸せるわけがない……だが、朔夜は知っているんだろ。朔夜や水渚は知っていてなお銀髪と一緒に行動することを決めたんだろ?」 「恐らくな」 朔夜や水渚、栞がいないとなれば可能性は一つしかない。 朔夜や水渚がいつの間にか姿を消していた理由に、そこで合点がいった。 篝火や千朱に伝えたくなかった。選択をさせるために、そして――拒否されるのを恐れたが故に。 朔夜と水渚は銀髪の味方をする。篝火は直感出来た。朔夜は銀髪を父親のように慕っている。 「……榴華はどうするつもりだ?」 「雛の言うとおりにするつもりだ。支配者を――銀髪を失った罪人の牢獄は静かに滅びの時を迎えるだろう、その前に俺は罪人の牢獄を脱出して蹴りをつける」 柚霧を無残に殺された事だけは許せない。何があっても、生きながらえた命を無駄にはしない。 「雛とは、出来れば戦いたくはないがな」 ――それでも、雛と戦う時が来たら、俺は全力で戦う。 榴華の命の恩人だけではない、柚霧の命の恩人でもある。雛罌粟は、ふざけた態度の榴華を好いてはいなかったが、それでも――何時だって雛罌粟は親切だった。 ――何時だって、雛罌粟は柚霧のことを気にしてくれた。 「お前らはどうする」 再度問われる問い。 「……俺は銀髪についていく理由はねぇよ」 千朱が先に返答する。 「……俺も、だな」 僅かに迷いを含ませながら篝火も答える。朔夜たちの姿が脳裏に過る。朔夜たちがその道を選んだのなら、邪魔をするつもりはない、けど――銀髪がすることを容認することはできない。 「なら、俺と一緒に後で脱出するか?」 「あぁ、そうする」 榴華と一緒ならば心強い。榴華は復讐の刃を潜ませながら静かに最果ての街を睨む。 +++ 「時が来たようだな」 泉は薄暗い部屋の中で静かに、静かな部屋でさえ聞き逃しそうな音量で呟く。 「ついにってわけか」 律が椅子から立ち上がる。舞台が揃うのを待っていた。利用出来るものは何だって利用する。 利用して利用して、それで目的を達成する。利用しているのは、何も自分たちだけじゃない、誰もが利用するタイミングを見計らっている。 「俺たちは俺たちの復讐を」 「僕たちは僕たちの目的を」 律とカイヤが同時にハーモニーを奏でる。 薄笑いしながら、残酷な瞳で何を思う。 [*前] | [次#] TOP |