零の旋律 | ナノ

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 雨が降りしきる空を眺めながら、時を待つ。
 室内からベランダに繋がる窓に手をかけ、外に出る。屋根のお蔭で雨には濡れない。
 薄暗い空に覆われ星空を見ることは叶わない。最も時間帯的にいってもまだ星を見るには早い。
 しかし、薄暗い空は、ある場所を想起させた。

「……後、どれくらいだ」

 誰に問うたわけではない、完全なる独り言。その証拠に青年の周りには誰もいない。
 明朗な時間は青年にもわからない。
 漆黒を纏い、幾つもの情報をこの手で握っていても――最善を尽くされた機密の細部まで知ることは叶わなかった。最も精密な時間を知っていた所で、やるべきことは変わらないし計画には何一つ支障がない。

「……」

 青年は黙って空を眺め続ける。雨音に耳を澄ませながら、時間が流れるのをひたすら待つ。
 ――大切な人を奪ったこの場所に居続ける意味はない。
 心の中で呟く言葉が、青年の決意を確固たるものへ変貌させていく。
 元々大切な人のためにしか動かなかった。だからこそ躊躇や迷いは存在しない。

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 許されざるものも、許されたいものも、許さずものも。
 全てを一つに纏めて、凝固――させる。
 滅びの時を迎えるのなら――それは人が自らの手で招いたものならば――清算する時が訪れたのか
 失われた死を求めて永遠を生き続け、最後の可能性に縋りつく。

「……数百年の安泰なる時に、過去を忘れた人々に復讐をしに」

 銀髪は螺旋階段前で、一歩一歩踏みしめ歩く。何処か名残惜しそうに、そして絶望と希望を抱きながら。
 最後の可能性が、成功するか失敗するか見当もつかない。期待を胸に抱き、恐怖に蝕まれる。
 けど、それを表面上に出すことはない。

「さて、罪人の牢獄から出ようか」

 後ろに控える罪人達を振り返り、告げる。支配者がいなくなった牢獄はいずれ滅びる。
 街の結界は効力を無くし、砂の毒に蝕まれる。そうして、人の住めない土地と――元に戻る。
 ――是でいい、これしかない。
 躊躇も迷いもいらない。ただ、全身するだけ。吹き付ける風は砂を含んでいて、少し痛い。
 痛みなど、ほとんど感じないはずなのに、風が痛かった。
 罪人達は銀髪に続いて螺旋階段を上る。全ての罪人が銀髪の元へ集まったわけではないが、それでも大半は此処にいる。


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