零の旋律 | ナノ

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「俺は、その時大切な相棒を亡くしたばかりで、それも食い止められたかもしれない死を」
「具体的には?」
「相惚れ自惚れ片惚れ岡惚れとか言ってくれた奴だったんだけど、俺はそれを表面から認めることが出来なかった。それが原因で、一人で出来るはずのない無茶をやらかして死んだ。俺はその事実が認められなくて自暴自棄になって捕まりこの牢獄に来たんだ」
「それは、似た者同士だね」

 あの時の水渚は、否。千朱と再会したこの時まで自暴自棄だった。
 千朱がいないことに耐えきれなかった。
 だからこそ、篝火と水渚はあの時似た者同士だった。

「あぁ。だから俺はずっと気になっていたんだよ」

 水渚の噂を時々聞くことはあった。けれど何時も自暴自棄で生きているから生きている、死んでいたらそれまで。どちらに天平が傾こうが構わない、そんな様子しかなかった。
 何時か、水渚が心から笑える日が来てほしいと篝火はずっと思っていた。水渚に出会ったその日から今日まで。

「君は、優しいんだね」
「優しくなんかないさ、全然な」
「優しくなかったとしても、俺としては嬉しいな。水渚のことを考えてくれていた人がいるってだけでね」

 栞は篝火に握手を求める、それを素直に篝火は応じた。

「なんか、自分蚊帳の外なんですけど」

 榴華が一人愚痴を言ったのを篝火は笑う。

「お前もはいればいいだろう」
「自分はええよーあぁ、柚に会いたくなりましたわ」
「ならそろそろ戻るか」
「そやね」

 栞がキレることもなく、朔夜も無事だった。これ以上この最果ての街に滞在する必要はない。
 一同は第一の街に戻ることにした。といっても水渚は現在最果ての街の住民なのだが、近々第一の街に引っ越すとのこと。

「そうそう千朱ちゃん」
「なんだ?」
「僕は今でも千朱ちゃんの金色は綺麗だって思っているからね」
「……そうかよ」

 嘘偽りなく、心の底から水渚は綺麗だと告げる。嘗てと変ることなく。色あせることなく。


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