零の旋律 | ナノ

第二話:銀の想い


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 風をも切る連撃。袖口からは無数の武器が現れては消え、そして投擲され、また現れる。
 無数のクナイが魔術を纏い縦横無尽に駆け巡る。銀髪は交わそうとレイピアを振るうが、それらを巧みにかいくぐり次から次へと銀髪の身体に突き刺さる。

「全く、流石だよね」

 数々の暗殺術を網羅している怜都相手に、銀髪は苦笑する。耐久戦に持ち込もうとも、しかし榴華の時とは違い、問題は榴華を凌駕する体力を怜都が有していることだ。
果たして何時まで凌ぎ続けなければならないのか、それを考えると後ろの最期の楽園が目に入る。

「(そこまでの時間は有していられないか)」

 尤も最期の楽園が怜都もろともの命を奪うことは可能だ。しかし――そのまえに障害を片付けておきたかった理由がある。
 強さを求めてはいなかった。けれど、勝ちは求めていた。
 怜都のクナイが銀髪の腕をかすめる。銀髪は不老不死の身体で、怪我を気にせずに怜都を捕えようと動く。ほぼやみくもに振り回した攻撃では当たらない。
 だからたった一撃でも――銀髪は視線を向けることはなく雛罌粟と戦っている繚の姿を思い出す
 僅かな隙を怜都は見逃さない。容赦なく刀を振り下ろした時、銀髪はそれを素手でつかんだ。そして武器を持っている方の手で斜めに振り下ろした――怜都は素早く身を翻したが、僅かに二の腕をかすり血が流れる。

「怜様に何をしているんだ!」

 その様子が視界に入った繚は途端、怒りで我を忘れて雛罌粟と戦っていることを放棄して銀髪に向かう。
 ――怜様の腕に傷をつけるなんて、許せない許せない許せないユルセナイ!

「繚!」

 向かってくる繚に対して、怜都が叫ぶよりも早く、繚のレイピアが銀髪の身体を貫く。銀髪は不老不死だ、死なない。銀髪の手にはレイピアが握られている――それが繚を無情にも斬り捨てた。

「……繚」

 海璃の視線は悲痛だった。誰も死なないで勝てる出来ごとではないし。既に命を奪われている“仲間”もいる。だからといって仲間が死ぬことを慣れるはずもないのだ。


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