零の旋律 | ナノ

]


 虚が攻撃に走ると地面が割れる。虚は跳躍する。捕えようと鎖が集まってくるので、虚はその場から移動して双海の背後へ回る。双海を守るように水の壁が現れる。しかし虚はそれを貫いて双海の腹部を貫く。
 自分の腹部から映えている刃を双海は素手で掴む。途端刀は霧散して消えた。消える何かを双海はイメージしたのだ。そして虚の方を振り向く。虚は口元を歪ませた。
 渾身の一撃を虚は交わして双海の身体を袈裟斬りにする。血飛沫が虚の銀髪を染め上げる。反撃を食らう前に続けざまに切り裂いた。

「あははは、ほら言っただろう。私に勝てるものなどいないのだよ!」

 虚はその場に服が汚れるのも構わずに座った。いくら不老不死とは言え、疲れた。身体が痛い。

「はぁはぁ……(全く持って死なないだけの身体というのは不都合だよ)」

 休息をしてから愛しの弟の元へ向かおうとした虚だったが、その休息をあざ笑うかのように足音が此方へ向かってきている。鎧の隙間と隙間がぶつかり合う音。金属が地面を歩く音。それらが酷く耳ざわりだった。

「――全く、今さら何のようだい、王様?」

 虚は重い腰を上げて立ち上がる。苛立ちが隠せなかった。そこには現国王と多数の騎士が此方へ向かってきていた。

「世界を滅ぼすと豪語している輩を相手に何もしないと思っているのか? 君を捕える」
「あはははっ。笑わせるな! 私に勝てる存在ない度この世にいない! 今さら到着したところで、何もかもが手遅れさ!」

 虚は断言する。誰にも邪魔をさせない。死を。願いを。復讐を。滅びを。

「誰にも、私たちの邪魔はさせない!」

 狂気を垣間見せながら、虚が一歩歩を進めるだけで、背中に鬼神が守護しているかのような錯覚をもたらす。しかし、誰ひとりとして怯む者はいなかった――。
 それでも――疲労したとはいえ、不老不死の力は絶大だった。


- 242 -


[*前] | [次#]

TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -