零の旋律 | ナノ

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 双海が無数の輝きで虚を串刺しにしようとするが、途端銀の粉が舞い虚の姿が消える。

「カイヤ!」

 雪城が手を伸ばす。守ろう、自分の主を守ろう。そんな意識で、カイヤの背後に銀の粉を待って現れた虚の魔の手から逃すために――カイヤの肩を思いっきり押した。

「えっ」

 カイヤはその衝撃で地面に座り込む。すると、カイヤを貫くはずだった刃は、雪城の首に突き刺さる。

「眞矢!」

 カイヤの真っ白な髪の毛に刃が抜かれるのと同時に多量の血が降り注ぎ、髪を赤く染めた。

「ちっ!」

 双海が幻術世界と現実世界を横断して、カイヤの腕を引っ張り虚の攻撃範囲から外れる。尤も虚は銀の粉で何処にでも移動することが出来るのであるから、大した意味はないのかもしれない。

「眞矢……」

 雪城に泉を失った。それでも、三人の瞳から戦意が失せることはない。

「そもそも、思いあがるな! 私に勝つ? 笑わせるな。そんなことは誰にだって出来はしない!」

 鬼の形相で虚は断言する。迸る殺意、それは普段の余裕綽々の虚を知るものからすれば異常にさえ感じるかもしれない。

「勝つことは出来なくても、捕えることは不可能じゃないさ」

 汐の手に無数の鎖が現れる。双海の幻術だ。それを汐は巧みに操り回転させ、手元からはなし先端に付着した錘が虚の身体に巻き付き、鎖で雁字搦めにする。だが、虚は銀の粉を散らしながら姿を眩ませる。
 汐の眼前に姿を現すと同時に虚の手が汐の首を捕える。

「がっ」
「不可能さ。私を捕えることも勝つことも、何をしようと私に勝てるものなど存在しない」

 汐があがらう時間すら与えられず、歪な音が鳴り、汐の身体は力を失い虚にされるがままだ。

「エンちゃん!」

 カイヤの魔術が炸裂すると、盾が必要ないはずの虚だったが汐を盾にしてその場を凌ぐ。それは何度も殺されては再生を繰り返した結果、痛みを感じていることに他ならない。

「全く……馬鹿だよね、エンちゃんも(最期の最期に僕に殺されるなんて、ほんと)」
「さて、残りは魔術師と幻術師だねぇ」
「……カイヤ、どうする?」

 退くという選択肢は最初からない。そのどうする? という質問ではない。

「とりあえず双海をぶっ飛ばそうかな」
「は?」
「だってさぁ、双海。一つだけ言っておくよ――死んだら、元もこもないんだよ、銀――怜都にも会えないんだからね」
「……」

 カイヤの身体中から浮かび上がる魔術言語はカイヤにだけしか解読できない特殊な文字。それらが蛇のように蠢き、そして黄金に輝いていた瞳は、赤を取り戻し上半分を赤へ、下半分が黄金に混じり合った。


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