零の旋律 | ナノ

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「雪城! お前は人形たちを相手にしろ。キリがない。いけるか?」
「問題ない」

 人形五体を交互に相手にしていては、何時まで経っても虚にはたどり着けないと判断した泉は雪城一人に人形を任せる作戦を選んだ。雪城に無茶を押しつけているわけではない。雪城の実力ならば問題ないと判断したからだ。ならば何故五体相手にしている彼らが虚までたどり着けないと判断したかと、問われれば真っ先にこう答える。人数が多いからと。個々の力で勝てる相手ならば、態々共同して戦う必要はないのだ。本当に力を合わせて倒す必要がある相手はただ一人。白冴虚を除いて他にいない。
雪城が人形たちの前に立ちはだかると、虚もそれを受けて立つように人形を集結させた。そして今までは魔術の糸を極限まで細くした糸で操っていた人形たちの糸を断ち切り、人形たちが虚の魔力によって個々の動きが出来るようにする。人形へ意識を傾けながら、四人の相手をするのは聊か苦労する。不老不死とは言え、服が無事で済まなくなる可能性もあるからだ。

「さて、私が相手になろう。人形どもよ」

 雪城の自信に満ちた言葉とともに幻想的に雪が舞う。あっと言う間に芝生の地面を雪が多い冬景色を作り出す。
 人形たちは雪の地面に足を取られることなく、軽快な足取りで雪城との間合いを詰めて行く。金髪の人形がレイピアを素早く抜刀しながら雪城へ振りかざすと、雪城は半歩後に下がり斬撃の間合いから外れる。レイピアが下に振り切られたのを見きってから間を詰めて、足払いをして人形のバランスを崩すと、人形はレイピアを地面に投げ捨てて、雪の地面に手をついて足を一回転させてきた。
 それを雪城は後方に飛ぶことで回避する。人形はその勢いを利用して起き上がる。赤髪の人形が鎖鎌を振り回してきたので、雪城は鎖を掴んで引き寄せる。金髪の人形が再びレイピアを片手に襲ってくると、鎖を引っ張り鎖とレイピアをぶつける。鎖を手放して後方に下がると、待機していた黒髪の人形が雪城の首を絞めるように掴んでくる。雪城は冷静に人形の足を踏みそのまま前のめりになって人形を背負い投げすると、人形は空中で半回転して華麗に着地した。
 一つ一つの動きが優美だと雪城が実感する間もなく、赤髪の人形が放った鎖鎌の刃が襲ってくる。それを雪城は蹴り飛ばす。あらぬ方向へ飛んで行った鎌は雪の地面に突き刺さった。
 紫髪の人形が斧を振り回して連撃してくると、雪城は軽やかな動きで一つ一つを確実に交わす。緑髪の人形が槍を突き出してくると、雪城は穂の上に飛び乗り、重心が下がるのと同時に緑髪の人形の背後に回って手刀を食らわせた。


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