\ 「じゃあ、君たちは帰るといいよ」 銀髪は扉を指差す。目的を果たした罪人達は顔を綻ばせながら、屋敷から出ていく。 「……すっごくあっさり終わったなぁ」 榴華は頭に手を当てて感想を述べる。何かひと悶着あると思っていた――否、ないとおかしいと。しかし実際は違った。 「まぁ彼らは元々凶悪犯罪を犯したわけでもないから、戻りたいと願っても不思議じゃない。それに、人によっては必要に迫られての犯罪もあるからね」 「それでもなぁ、何か違和感があるんやよ」 「罪人達にかい?」 「いいや、お前にだ」 榴華の見る先は一つ、銀髪はやれやれといった面持ちで首を横に振る。 「俺は別に彼らの望みを叶えてやるだけだが」 「そもそも、それがおかしいんやろが。罪人を外に出して何のメリットがあるんや」 「メリットがあるから出す、ってことだろ? つまりは」 「何を企んでいるんねん」 例え上司だろうが、関係ない。相手が驚異的な再生能力を保持していても榴華には関係ない。柚霧が傷つく可能性があるなら下剋上するのみ。 「さぁ、今はまだってところだけど」 「……」 「それより梓を知らないか?」 銀髪はあからさまに話を変える。 「外出中やないのか?」 「まぁ、そうなんだけど。まぁ梓に何かをしようって馬鹿な輩はこの牢獄には存在しないだろうからいいか」 「どんなやねん」 苦笑いしながらも榴華は肯定するしかない。そして苦笑いが意図的に表現してあることに銀髪は気付いても尚何も言わない。ただの閑話休題にしかすぎないから。 「何だか私は用がなかったみたいだね」 水渚が篝火に告げる。篝火も頷く他なかった。だが、危険を回避することが出来たので、よしとしていた。 「それにしても、栞。お前はなんで俺を呼んだんだ?」 朔夜が疑問に思っていたことを告げる。 「あー、待ち合わせ時間過ぎちゃったか。まぁ仕方ない。今度また場を設けるよ」 「?」 「秘密ってことだよ、朔」 「わけわかんねぇ」 栞が物事を明確に説明しないのは何時ものことだったが、説明をされないとモヤモヤが朔夜の中に残る。一体何をしたかったのか――と。 しかし栞の表情が普段と同じに戻っていることに安堵する。この状態なら栞は人を殺さない。 [*前] | [次#] TOP |