零の旋律 | ナノ

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「だろうな」

 泉は様々な武器を巧みに扱うことが出来る。一番扱いやすいのは鞭だったが、けれどその中で泉は銃だけは扱わなかった。幼いころから毛嫌いするように銃には触れなかった。理由は簡単だ、泉夜が銃を武器にしていたから、同じ道を選びたくなかった。その対抗心、敵愾心は今でも根強く残っている。
 激しい攻防は続く。怒涛の攻撃を泉夜は全て交わしきることが出来ず、無数の傷を負うがそれでも致命傷は全て避けていた。一方の泉は無傷だ。今の泉は情報収集のために力を回しておらず、戦闘に全てを注いでいた。玖城の力を全力で出し、闇を操る泉に対して、玖城の能力が劣っている泉夜に勝ち目はなかった。
 同じ闇が激突し合う時、より深淵に近い闇が、闇を飲み込むだけの話。

「ははは、強いな」

 泉夜はカラ元気に振舞う。

「これが親子の決着になるのなら、やっぱ清算するべきだよな」

 例えそこに若いという道が残されていなくても

「お前が親子だと思わなくても血は繋がっているんだから」

 過去の想いと現在の想いを繋ぎ合わせて

「だったら――血で血を洗おう真似だってしよう」

 殺意も愛情も、憎悪も憐憫も悲しみも嘆きも怒りも喜怒哀楽全てを認め、包み込み決着をつけよう。
 泉夜は泉夜にとって何よりも大切なシルバーリングのネックレスを首元から外した。その瞬間リングがひびわれ砕け散った。
 ――是は馨からの贈り物。大切な物。
 玖城馨が、玖城泉夜の外見を守るために泉夜の力を封じたリングだ。だからこそ、泉夜は泉と対決する上でそれを外す決意を固めていた。

「やっと本気になったか」

 泉は自然と笑みを浮かべていた。その笑みにどんな意味が隠されているか本人すらわからない。
 玖城泉夜の髪の毛は黒から白銀へと移り変わっていく。紫色の瞳に白銀の髪、それは玖城に存在しない色。故に玖城からは異端視扱いされて疎まれた。けれど、今は玖城の決着をつけるために、本来の色へ戻る。
 泉夜ではなく、玖城泉夜として。

「お前相手に本気にならずして勝ち目なんてそもそもないだろう」

 泉夜は心の底から笑った。泉の視線は泉夜を捕えている。それだけで再開するだけの価値は十分だった。そこで死ぬことになっても構わないほどの価値があったのだ。
 だから、笑える。馨が死んで初めて、心から笑える。

「そうだ――な」


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